和歌のレトリック~技法と鑑賞
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
和歌における序詞の役割と意味は「呪文」?
和歌のレトリック~技法と鑑賞(2)序詞:その2
渡部泰明(東京大学名誉教授/国文学研究資料館館長)
和歌の中で序詞はどのような役割を担っているのだろうか。渡部泰明氏は、和歌における呪文としての役割を提唱する。呪文とはいったいどういうことなのか。前話に続き、序詞について解説する。(全12話中第4話)
時間:10分30秒
収録日:2019年3月11日
追加日:2019年6月23日
カテゴリー:
≪全文≫

●集団で共有される記憶を作り上げる呪文としての序詞


 私は序詞というのは、集団で共有される記憶をつくり上げる呪文であると考えます。なかなか分かりにくい表現かもしれません。特に、記憶をつくり上げるという部分が、分かりにくいかと思いますので、ご説明いたします。

 一つの例として、『古今集』の歌を挙げましょう。

「春日野の雪間を分けて生ひ出で来る草のはつかに見えし君かも」

 これは壬生忠岑の歌です。この歌が詠まれた情景に関してご説明します。壬生忠見は、奈良で行われる春日祭に出掛けました。これは、春日大社で行われる大変大きなお祭りです。それを都人が見に行くのです。その時に女性たちも見物に出てきます。ですが、高貴な女性は牛車で行くので、顔は見せないようにしています。しかし、それに目を付けた男が壬生忠岑だったのです。「あ、すてきな女性がいる」と思って、どういう顔をしているかは分からないのですが、その家を訪ねてラブレターを送りました。その際の歌がこれです。

 「春日野に積もった雪の間から萌え出てくる草の姿はほんのわずか。わずかに姿を見せたあなただった」という意味です。チラッと見た、あるいは、すだれに映るシルエットでも見たのか、その点を歌っているのでしょう。

 この場合、「春日野の雪間を分けて生ひ出で来る草の」までが序詞です。わずかにという意味の「はつかに」という言葉を導き出す序詞になっています。この序詞は、確かに「はつかに」を導き出すためだけに用いられていますが、全くこの場と関係ないわけではありません。むしろ非常に深く関わっています。

 春日野で行われる春日祭にちなんで、また春日祭が行われる季節にもちなんで、雪の間から出てくる草という言い方をしているのです。

 まず、「春日野の」と言う部分で、大きな場所が示されます。そして「雪」ですが、一面に雪がまだ残っているわけです。ところが、その雪の間からわずかに草が出てきている。謎めいていますね。読者は、きっとハラハラしながら、一体何なのだろうと思うはずです。

 そして、最後の部分で「はつかに」、つまりわずかに出てきた草のように、わずかにあなたを見た、そして恋をしてしまったということです。チラッと見ただけでも恋をしてしまいまうものですから。その恋という結論に向けて、まるで自分でもどうしようもない運命に翻弄されてい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
「万葉集」の聖徳太子――語りかける人(1)日本人の憧れ
聖徳太子と日本人…「実在しなかった」説の真相とは?
上野誠
真山仁の小説論(1)想像力と技術の不足
読み手の琴線に触れる技術が失われてきている
真山仁
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(1)シェイクスピアの謎
シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?
河合祥一郎
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
司馬遼太郎のビジョン~日本の姿とは?(1)1923年生まれの3人の作家
司馬遼太郎と日本人…まず遠藤周作、池波正太郎との比較で考える
片山杜秀
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
板東洋介

人気の講義ランキングTOP10
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(8)『オデュッセイア』の世界的影響
オデュッセイアが物語のフォーマット?…アラビアンナイトから百合若物語、ひまわりまで
松村一男
「満洲」から考える日本とアジア(4)蒙古襲来と清朝建国
実は元寇はモンゴル人ではなかった?満洲をめぐる民族興亡史と「漢族」との関係…蒙古襲来から清朝建国まで
宮脇淳子
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
クラシック音楽の歴史をピアノ演奏で辿る~ヴィヴァルディ四季
野本由紀夫
テロメアから考える「アンチエイジング」(1)老化とテロメアの関係
テロメアの長さが「がんリスク」と「老化」のカギを握る
堀江重郎
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
編集部ラジオ2026(32)鎌田東二先生の法華経講義解説-1
【10min名作探訪】鎌田東二先生の『法華経』講義の核心ビジョン
テンミニッツ・アカデミー編集部
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
生成AI「Round 2」への向き合い方(4)日本企業のAIモデル
Copilotに訊いてみた!日本企業のAIモデルの特徴とは
渡辺宣彦