和歌のレトリック~技法と鑑賞
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
枕詞は畏敬を表わす呪文?…和歌の中での役割と効果とは
和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その2
渡部泰明(東京大学名誉教授/国文学研究資料館館長)
枕詞はいったいどのような言葉を修飾し、和歌の中でどのような役割を担っているのだろうか。「あしひきの」や「たらちねの」など実例をいろいろと挙げながら、神様や信仰の対象を崇敬するなど枕詞の役割を解説する。(全12話中第2話)
時間:12分10秒
収録日:2019年3月11日
追加日:2019年6月15日
カテゴリー:
≪全文≫

●神様を褒めたたえる言葉としての枕詞


 枕詞ですが、(前話で)文脈から孤立している、不思議で不可解なものとしてあり続ける言葉だと説明しました。なぜこのような言葉が使われるのか、そのことが問題となります。そこで、枕詞が一体どういう言葉を修飾するところから始まったのかという点を、確認しておきたいと思います。

 まず、神様の名前を修飾する枕詞が大変古くからありました。例えば、『日本書紀』にある、次の言葉です。

「神風(かむかぜ)の伊勢の国の、百伝(ももづた)ふ度逢県(わたらひのあがた)の、さく鈴五十鈴宮(いすずのみや)にます神、名は撞賢木厳之御魂(つきさかきいつのみたま)あまざかる向津媛命(むかつひめのみこと)なり」

 これは歌ではなく台詞です。神様が自分の正体を語っている託宣の言葉なのです。

 この中で、スライドでは太字になっている部分が枕詞です。「神風の」が「伊勢」に掛かり、「百伝ふ」が「度逢」に掛かり、「さく鈴」が「五十鈴宮」に掛かっています。また、「あまざかる」が「向津媛命」に掛かっています。枕詞が4つ含まれているのですが、最初の3つは地名に掛かっています。対して、4つ目は「向津媛命」という神様の名前に掛かっています。

 しかも、最初の3つは単なる地名ではなく、伊勢神宮に掛かる枕詞です。つまり、尊い地名や神様の名前などについて、それらを褒めたたえるという役割を持っているのです。また、当然それらは、宗教儀礼の中で用いられるのが基本であると考えられます。つまり、荘重さを喚起する、もしくは重々しい気分を強めるという役割を担っていたと考えられます。

 その他にも、「八雲立つ出雲八重垣つまごめに八重垣作るその八重垣を」という歌や、「こもりくの泊瀬(はつせ)の山のやまのまにいさよふ雲は妹にかもあらむ」という歌があります。これらは、両方とも非常に古い歌です。「八雲立つ」が「出雲」という地名に、また「こもりくの」が「泊瀬」という地名に掛かっています。

 このように、地名に掛かる枕詞は大変多く見られます。これらは全て「土地褒め」といいますが、その土地を褒めたたえるものです。特に神様に関わる土地を褒めるものが多いのです。

 ということで枕詞には、神様およびそれに関わるものを褒めたたえるという機能が最初にあります。


●普通名詞を修飾する枕詞


 そして、神様...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
板東洋介
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
印象派の解体と最後の印象派展(1)セザンヌと印象派
印象派の画家に大きな影響を与えたセザンヌの構築的筆触
安井裕雄
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留

人気の講義ランキングTOP10
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
イラン戦争と終末論(1)イラン戦争の戦略的背景と米国の政策
なぜイラン戦争がこのタイミングなのか?戦略的背景に迫る
東秀敏
編集部ラジオ2026(14)小宮山宏先生:知識の構造化のために
【10min名作探訪】テンミニッツ・アカデミーの意義と発想法
テンミニッツ・アカデミー編集部
ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大
「ハイブリッド戦争」の実像…ロシアが考えていることとは何か?
廣瀬陽子
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
本質から考えるコンプライアンスと内部統制(1)「法令遵守」でリスクは管理できない
「コンプライアンス=法令遵守」ではない…実例が示す本質
國廣正
「逆・タイムマシン経営論」で見抜く思考の罠(3)飛び道具トラップと「文脈剥離」
IT業界で次々に発動される飛び道具トラップのメカニズム
楠木建
知識の構造化のために(1)テンミニッツTVの問題意識
「知識の爆発」の時代、不可欠なのは世界の全体像の把握
小宮山宏