和歌のレトリック~技法と鑑賞
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
枕詞よりも長く、使い方が固定的でない序詞
和歌のレトリック~技法と鑑賞(2)序詞:その1
渡部泰明(東京大学名誉教授/国文学研究資料館館長)
和歌のレトリックとしては、枕詞よりも耳慣れないであろう序詞。大きく3類型に分かれるというが、どのような方法で、どのような効果を生むのか。今回も2話に分けて具体的に説明し、古代人の考え方を序詞の役割とともに紐解いていく。(全12話中第3話)
時間:13分23秒
収録日:2019年3月11日
追加日:2019年6月23日
カテゴリー:
≪全文≫

●枕詞よりも長く、使い方が固定的でない序詞


 今回は、和歌のレトリックの一つである序詞(じょことば)について、お話をしたいと思います。「じょし」と読んでいただいても構いませんが、私は「じょことば」と言い習わしているので、そちらで統一させていただきます。

 この序詞について、大学の教室などで「序詞とはどういうものだろうか」と学生に尋ねると、学生もあまりよく知らないので「枕詞の長いもの。でも一回一回違うんだったかな」などと答えますが、実はこれは結構正しいのです。

 言い方が少し幼いので、もう少しきちんと答えてほしいとは思いますが、この回答は概ね正しくて、序詞とは枕詞の長いものを指します。ところが、枕詞はおおむね同じ言葉を同じ言葉が修飾すると決まっていますが、序詞は一回限りであることが多いのです。特定の言葉を導き出すという点では同じでも、序詞は基本的には一回限りで終わり、二回以上は用いません。つまり、使い方が固定的ではないということです。

 具体的な例を見てみましょう。

「時鳥(ほととぎす)鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな」
「夏の野の茂みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものそ」
「海(わた)の底沖つ白浪たつた山いつか越えなむ妹があたり見む」

 3つの序詞を用いた歌を取り上げましたが、それぞれどの部分が序詞でしょうか。

 まず1番目の和歌に関しては、「時鳥鳴くや五月のあやめ草」という部分が序詞で、「あやめ」という言葉を導き出しています。

 2番目の和歌に関しては、「夏の野の茂みに咲ける姫百合の」という部分が序詞で、「知らえぬ」という言葉を導き出しています。

 3番目の和歌に関しては、「海の底沖つ白浪」という部分が序詞です。今回は2句だけです。これが、白波(白浪)は立ちますから「たつ」を導き出していて、この「たつ」が「たつた山」に掛かっています。つまり、「たつた山」に「たつ」が掛けられていて、その「たつ」を導き出す序詞が「海の底沖つ白浪」なのです。

 さらに言いますと、「海の底沖つ白浪」というのは、沖の海の底という意味です。実は、「海の底」が「沖」を導き出す枕詞なのです。つまり、入れ子型になっていて、序詞の中に枕詞が入っているのです。やや過剰な装飾のように見えますが、実はこういった表現はよくあります。

 これらは全て、序詞を用いた...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1
ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?
渡部泰明
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
百人一首の和歌(1)謎の多い『百人一首』
『百人一首』の歌が選ばれた理由とは?今も残る3つの謎
渡部泰明
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
『源氏物語』を味わう(1)『源氏物語』を読むための基礎知識
源氏物語の基礎知識…人物関係図でみる物語の流れと読み方
林望
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷
釘貫亨

人気の講義ランキングTOP10
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(1)人を真に活かす人事評価とは
ソニー流の「人材論」「新規ビジネス論」を具体的に語ろう
水野道訓
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
おもしろき『法華経』の世界(9)「如来寿量品」と三身論
仏の寿命は無量で久遠に実在する…「如来寿量品」の神秘
鎌田東二
こどもと学ぶ戦争と平和(2)「本当の平和」とは何か
「平和」には2つある…今の日本は本当に平和なのか?
小原雅博
逆境に対峙する哲学(10)遺産を交換する
ナイチンゲールの怒りから学ぶこと…逆境の中で考えるとは
津崎良典
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
「アカデメイア」から考える学びの意義(4)学びの3つのキーワード
より良い人生への学び…開かれた知、批判の精神、学ぶ主体
納富信留
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(6)政治と経済をつなぐ公共哲学
どのような経済レジームを選ぶか…倫理資本主義の可能性
齋藤純一