●小説が娯楽と教養の中心だった時代の作家たち
司馬遼太郎さんはご存じの方も多いかと思いますが、今年(2023年)が生誕100年です。
私などの世代(50代)では、子どもの頃から自分が読んでいて、大人もみんな読んでいたような作家はちょうど生誕100年前後の人が多いような時期になっているのかもしれません。
といいますのは、2023年は遠藤周作さんという小説家も生誕100年で、それから、池波正太郎さん。『鬼平犯科帳』で有名でしょうが、『真田太平記』や『剣客商売』などの作品もあります。時代劇のお好きな方であれば、池波さん(の作品)は、ここ何十年もコンスタントにどこかでやっているイメージがあると思います。
彼らはみんな1923年生まれです。ただ、池波さんは1月生まれ、遠藤さんは3月生まれ、司馬さんは8月生まれですから、たぶん学年でいうと、池波さんと遠藤さんのほうが、司馬さんより小学校入学(年度)などは1つ違うかと。同じ年といっても、日本人はやはり年度が重要なので、そういうことを考えると1年違っているともいえるわけですが、みんな1923年生まれで、生誕100年を迎えています。
3人はだいぶジャンルが違うということもありますが、昭和40年代から60年代、平成前半くらい(に活躍されました)。池波さんの場合はテレビドラマ化や映画化の関係もあるので、司馬さん以上にテレビなどにおける露出は多くなって、それが続いている時代は結構長いということもあると思います。『鬼平犯科帳』も新しい(映画や)テレビドラマがつくられるタイミングになっているようです。
そう考えると、小説というものが確実に今以上に多くの人たちの娯楽であり教養であった時代に、遠藤さんは純文学ということになりますが、ユーモア小説や青春小説など、いわゆる通俗小説もたくさん書いたうえに、歴史小説も実はたくさん書いている方です。池波さんは、いわゆる時代小説家ですが、真田幸村がらみのものなど少し創作が多いという点はもちろんですが、単純な娯楽小説を超えたようなものも含めて、広い意味での時代小説家、歴史小説家といえます。司馬さんは、いうまでもなく時代小説家・歴史小説家であり、文明論者や評論家のような非常に大きなスタンスで活動された方です。
この人たちは1923年生まれ。つまり敗戦までに成人して戦争中にか...