宗教で読み解く世界
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本宗教の特徴…水と油の「神と仏」をつなぐ本地垂迹説
宗教で読み解く世界(5)日本の不思議と世界のゆくえ
橋爪大三郎(社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
日本にもともとあった神道と後から入ってきた仏教は、いわば水と油のような関係にある。そこで日本は時代により、神道と仏教を同じとみなす本地垂迹説と、神仏を分離する廃仏毀釈という、全く正反対の立場を取ることになる。その背景とともに日本の宗教について解説する。また、最後に橋爪大三郎氏が自著から世界の宗教を理解するためにおすすめの本を紹介する。(全5話中第5話)
時間:13分50秒
収録日:2019年1月21日
追加日:2019年6月16日
カテゴリー:
≪全文≫

●宗教の社会的地位が低い日本


 橋爪大三郎です。私の話も5回目になりますが、日本についてお話ししましょう。

 日本の宗教というと、神道があり、後から仏教が入ってきています。ということですが、日本では宗教のことをあまり考えることがなく、宗教の社会的地位が低い。これが日本の特徴です。世界でこのような国はあまりないと、まず思っていただきたい。

 キリスト教の世界では、キリスト教という宗教の価値は非常に高いのです。イスラム教の世界では、宗教の価値はキリスト教の世界よりももっと高いかもしれません。ヒンドゥー教の世界では、宗教を担当するバラモンが一番社会のトップに君臨していました。中国は政治が頑張っているのですが、なぜ政治家が政治を頑張っているのかというと、儒教の原則を踏まえているからです。

 このようなわけで、世界の大部分の地域では、宗教は社会的地位が高く、最も尊敬され、その指導的な役割を担う人が深くそれにコミットするものなのです。


●行政指導に左右されてきた日本の宗教


 一方、日本では宗教はあまり大したことではないということになっているのです。これはいろいろ考えると、政府の行政指導のせいといえるかもしれません。江戸幕府は約300年にわたって仏教を軽視して、仏教に宗教活動をやってはいけないことにしました。その代わり、戸籍簿の整理とか、葬式とか、本来の仏教と関係ないことばかりさせて、それで何とかやっていきなさいというようなことになっていたのです。宗教に当たるものとして儒学があるから、武士は儒学をやりなさいということで、儒学と仏教を競わせていたのです。

 この江戸時代の約300年があった後に明治時代になったのですが、明治政府は考えました。外国のキリスト教が入ってきて、日本がクリスチャンになってしまって外国の言うことを聞いたら大変だ。植民地を見ると、宣教師が入ってきて、それで国中にキリスト教が広まって、民族独立ができなくなってしまったという例がたくさんあった。だから、この心配は理由がないわけではない。そこで、キリスト教を痛めつけるようなことにしたのです。でも、露骨に行うと外国が黙っていませんから、陰湿にという意味で、考えたのが神道を利用することでした。公民教育というものがあって、「天皇陛下は偉いお父さんです。天皇がいて、日本は神の国で良かったですね」というようなこ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
北欧神話の基本を知る(1)世界でもっとも悲観的な神話
世界滅亡を予言!?人類史上もっとも悲観的な北欧神話とは
鎌田東二
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ