折口信夫が語った日本文化の核心
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
寅さんも水戸黄門も…「ほかひびと」が伝承した貴種流離譚
折口信夫が語った日本文化の核心(3)貴種流離譚と型の文化
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授(特別専任)/奈良大学 名誉教授)
日本の物語の多くは古来から「貴種流離譚」といい、偉い人が流浪の旅を続ける苦難の物語である。折口信夫は、そうした物語を伝承したのは自らも流浪の民だった「ほかひびと」だと指摘している。さらに語りには必ず弦楽器を伴い、それが日本の文化の「型」でもあるという。『万葉集』では、最初に男性から歌を詠んで、そこでまず女性は「跳ね返す」が、これも1つの「型」である。そうした「型の日本文化論」を展開してきたのが折口信夫である。(全4話中第3話)
時間:16分52秒
収録日:2022年9月13日
追加日:2023年1月9日
カテゴリー:
≪全文≫

●日本の物語の多くは「貴種流離譚」


 折口信夫は大きくものを見ることによって、見えてくるものがあると教えてくれます。他界から神がやって来て、流浪の生活をしながら、また他界に戻っていく。日本の物語のほとんどが、偉い人たちが旅を続けていく苦難の物語になっているのはなぜかと考えるのです。

 これが有名な折口信夫の「貴種流離譚」の説です。「貴種」とは偉い人です。その人たちが流離して旅を続ける。この物語の形は、古代の天皇の物語にも通じるところがあります。神武東征もそうですし、顕宗天皇・仁賢天皇の物語もそうです。

 平安時代になると、典型が「物語の出来(いでき)はじめの祖(おや)」といわれる『竹取物語』です。『竹取物語』は月の世界からやってきて、竹取の翁(おきな)と媼(おうな)に育てられ、大切にされるけれど、また月の世界に戻っていく話で、これも貴種流離譚です。

 『伊勢物語』もそうです。『伊勢物語』は「身を要(えう)なきものに思ひなして」、つまり自分を世の中ではもう役に立たない者と思って、東下りする話です。その東下りする途中に、いろいろな苦難に遭遇しながら主人公が成長していくのです。

 このタイプの話は、現在も続いています。『水戸黄門』も本来は偉い人が、いろいろなところを訪ね歩いて、悪事を働いている者を懲らしめて、また旅を続けていきます。これも貴種流離譚といえなくもありません。

 さらには、映画のほとんどが、さすらい者シリーズです。例えば『ギターを持った渡り鳥』もそうです。「寅さん」だってホームベースは柴又ですが、寅さんが旅を続けていくことにより、いろいろな人と出会っていく物語です。これが貴種流離譚という物語パターンになっているわけです。


●「歌」も「語り」も楽しむ日本の文学


 さらに、折口信夫はそうした物語について、自分自身も流浪の民として歩いていた「ほかひびと」たちが長く伝承していったのだろうと言っています。彼らはほとんどの場合、弦楽器を持って語ります。

 これが折口信夫の面白く、大胆なところです。日本の語り物芸は、必ず弦楽器を伴うというのです。古い時代は、琴であったと。実際、『日本書紀』などを読むと「琴で語る」といった内容が出てきます。その次は、琵琶であると。琵琶の語りとなると、これは『平家物語』になります。

 さらにその次は、大陸から渡来...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
原因と結果の迷宮~因果関係と哲学(1)因果関係とは何なのか
原因と結果の迷宮―因果関係と哲学
一ノ瀬正樹
本番に向けた「心と身体の整え方」(1)ディテールにこだわる
集中のスイッチを入れる方法は意識からと身体からの2通り
為末大
世界の語り方、日本の語り方(1)なぜ「語り方」なのか
今後身に付けるべき知性として「新しい語り方」を考える
中島隆博
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(序)『ばけばけ』と『神国日本』
ラフカディオ・ハーンの遺著『神国日本』の深い意義とは?
賴住光子
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(1)アフォーダンスとは何か-1
トップアスリートが語る究極の「アフォーダンス」とは
佐々木正人

人気の講義ランキングTOP10
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(9)ユダヤ人の多様性
ユダヤ人は一枚岩ではない…米国ユダヤ人のイスラエルへの違和感
鶴見太郎
「逆・タイムマシン経営論」で磨く経営センス(1)人口問題の本質
「逆・タイムマシン経営論」は本質を見抜くための方法論
楠木建
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
三日坊主、部屋が片付かない…なぜできないか行動分析学で考える
島宗理
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
編集部ラジオ2026(12)自転車の青切符と「法と自粛」
【10minで考える】自転車の青切符と「法と自粛」
テンミニッツ・アカデミー編集部
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(1)お金の機能とその要件
お金の「3大機能」とは何か? そしてお金のルーツとは?
養田功一郎
新撰組と幕末日本の「真実」(序)『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の魅力と史実の絶妙さ
新撰組と『ちるらん 新撰組鎮魂歌』…群像劇としての魅力の源泉に迫る!
堀口茉純
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(1)なぜ『神国日本』なのか?
ラフカディオ・ハーンが解明した「美しい日本」の秘密と未来
賴住光子