石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
慎太郎がスポーツや五輪を強調した理由…大衆の欲望の解放
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿(5)セクト化する三島と大衆動員する石原
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
三島由紀夫と石原慎太郎は同じ「保守」という括りにされることが多いが、2人は大きく異なっている。三島はつねに自身の美学・観念が先行していたのに対し、石原は現実の生活者・大衆の欲望を感じ取って表現した。さらに政治に対する見方も、自身の理想を先行させた三島と、つねに現在の日本を見つめた石原の違いがあった。(全9話中5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:16分42秒
収録日:2022年3月18日
追加日:2022年7月6日
≪全文≫

●観念を重視する三島由紀夫、現実を重視する石原慎太郎


片山 三島由紀夫さんの文学は、「失われたものだけど、あれが大切だった」ということを描く。失われたものを取り戻せない人間がいかに無意味で、孤独で、つらく、悩んで、虚脱して生きるか。『仮面の告白』もそうです。何か真の実感を得られないで苦しんでいる。

 もちろん石原慎太郎さんの「太陽族」も、本当の生きがいを見いだせなくて困っている人たちですが、乱暴な行動に走って解消することになる。これがもっと通俗化すれば、石原慎太郎さんのすぐ後に登場する大藪春彦さんの世界がまさにそれで、ハードボイルドです。『野獣死すべし』のように。

 石原慎太郎さんも実はハードボイルド小説を書くのが得意でしたが、ハードボイルドに行ってしまう人と、それに行けないインテリの苦悩といったものがありました。そこに行くためには失われた観念を取り戻さなくてはいけない、と。

 それが三島由紀夫さんの場合は、日本国民の99パーセントが否定しても「自衛隊を国軍にして、死なせ得る価値というものを国家に回復させるのだ。それなくして何の生きる意味があるのだ」と誰もついてこないようなことを言う。そして、ついてくる若者だけを集めて楯の会を作る。自衛隊の中にもついてくる人がいると思って、とりあえず呼びかけてみたけれど、ついてこないのなら切腹をする。こういった華々しい、美的な死に方によって、後世に何かしらのメッセージを残す。

 小説もとりあえず全て書いてしまったから、自分の観念・美学の中で行うべきことは全て行った。『平家物語』での平知盛の美学のような「見るべきものは全て見たので、あとは死に、後世をただあの世から笑って見るのみ」といった感じだったと思います。

 それに対して石原慎太郎さんは、同じ保守的で、三島由紀夫さんの後輩のように思っている人もいるかもしれませんが、今言ったような三島美学とはまったく関係がありません。常に大衆(特に生命力の強い若者)の中にあるイライラや怒りを、『太陽の季節』のような小説によって最大化して、ぶつける。そうすると、先鋭な人たちが共感する。

 その共感の人気に乗る形でタレント化しながら、また小説を書く。これを繰り返しながら、いわゆるマルチタレントとして、映画監督も俳優もする、弟を映画の大スターにする、弟の映画のための原作やシナリオを提...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
古関裕而・日本人を応援し続けた大作曲家(1)恩師との出会い
六甲おろし、栄冠は君に輝く、長崎の鐘…古関裕而の魅力
刑部芳則
「万葉集」の聖徳太子――語りかける人(1)日本人の憧れ
聖徳太子と日本人…「実在しなかった」説の真相とは?
上野誠
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
板東洋介
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(1)あらすじと賢治の原稿
未完の長編『銀河鉄道の夜』の魅力と宮沢賢治の思想に迫る
鎌田東二
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己
司馬遼太郎のビジョン~日本の姿とは?(1)1923年生まれの3人の作家
司馬遼太郎と日本人…まず遠藤周作、池波正太郎との比較で考える
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(1)老年病科と高齢者の疾患・病態の特徴
頻尿、低栄養、転倒、誤嚥、フレイル…増える老年症候群と高齢者の疾患・病態の特徴
小川純人
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
「満洲」から考える日本とアジア(5)ロシアのシベリア征服と日清日露戦争
「満洲利権」はなぜ日本の手に渡ったか?…ロシアの極東征服、そして朝鮮の混乱が日本を日清・日露戦争へ
宮脇淳子
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
「ホメロス叙事詩」を読むために(5)『イリアス』の世界ーその1
叙事詩イリアス…トロイア戦争最後の50日間を描いた傑作
納富信留
日本の財政の真実を検証する(1)膨らむ借金の知られざる実態
日本の財政の「真実」をデータで徹底検証…国際機関の分析は?
宮本弘曉
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
キリンでつかんだ「幸せになる」仕事術(1)悩みの99%は他者との関係性
「使命観=パーパス」に立脚できないのは自分のエゴのせい
田村潤
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎