産業イニシアティブでつくるプラチナ社会
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産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(5)社会的共通資本によるプラチナ社会へ
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
オーバーツーリズムの問題が指摘される観光産業だが、社会のプラチナ化が実現すれば、先進的な未来観光の地として観光産業を再生できる。また、そうしたプラチナ社会のインフラは、個人の投資による社会的共通資本の共有で支えることも可能だ。最終話では、観光と住民出資の観点からプラチナ社会の構想を解説する。(全5話中第5話)
時間:7分07秒
収録日:2025年4月21日
追加日:2025年10月30日
≪全文≫

●プラチナ社会の実現が観光の未来をつくる


 あとは観光なのですが、これはもう話は簡単で、日本は今でも食事がおいしくて、温泉があって、自然が美しくて、文化があって、ともかく安全で、人が優しいということで、人気あるわけです。

 けれど、たくさん来ても大して儲かっていないですよね。それでオーバーツーリズムです。私は下北沢にいるけれど、もう辟易しています。困っています。

 だから、今のところ日本はいい国だという物見遊山の観光なのです。けれど、今のプラチナ構想の(プラチナ産業イニシアティブの)4つができれば(日本への見方も違ってきます)。

 「山をどうするか」というところは、森林産業を見にいく。「人をどうやってこれから教育していくのか」というところは、今(第4話で)申し上げたような人財産業だとか。再エネをどうするのか(も同じです)。

 要するに「日本に来れば未来が見える」という状況をつくりたいのです。産業イニシアティブができれば日本で丸ごと未来観光ということができるのではないかということで、ニセコや白馬などがうまくやったということになっているけれど、ああいうことを、全国でいろいろな形でやっていくことが十分可能なのではないかと、トランプ(政権)のやっていることを見るたびにそのような気がします。


●住民出資による社会的共通資本としての産業を築く


 それで、ここから最後です。最初に申し上げた社会的な共通資本にいくのですが、私はこれを森林だとか、再エネだとか、教育システムだとか、そういったものをどこかの企業がやることになると思うのだけれど、そういったところを住民が所有していくのがいいのではないかと思っているのです。

 それで今、必要なものというのは必要だから売れているわけなのだけれど、(それが)分からなくなってきているのです。分業したからというけれど、(つまり)分業によって1人ひとりの意味が分からなくなった、1つひとつの会社の全体における意味が分からなくなったというのは確かなのだけれど、分業というのは昔からそうなのです。昔、馬車をつくるのでも1人ではつくっていないのです。あれはそれぞれ得意な人がいろいろなものをつくって、できてきたわけです。ただ、規模が大きくなって複雑化したから、どこがどういう意味を持っているのか、分からなくなってしまったのです。

 森林もそう...

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