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イノベーターシップ強化に必要な「2つのリスキリング」

人生100年時代の「ライフシフト概論」(7)再活性化へ向けてのリスキリング〈下〉

徳岡晃一郎
株式会社ライフシフト 代表取締役会長CEO/多摩大学大学院名誉教授・特任教授
情報・テキスト
ライフシフトの時代、さまざまな経験を重ねてきたミドルシニアに学んでほしいのは、「自分には社会を変える力がある」と感じて、それを実現していくための「イノベーターシップ」である。特に現在急務である「デジタルリスキリング」と「ヒューマンリスキリング」の両立は、この世代がイノベーションに自覚的になることでこそ可能になるはずだ。(全9話中第7話)
時間:09:55
収録日:2022/06/15
追加日:2022/10/22
タグ:
≪全文≫

●学んでほしいのは未来創造のための「イノベーターシップ」


 イノベーションの本質は試行錯誤だといわれます。「このスキルを学べば、これができる」という直線的な話ではなく、いろいろなことを学びながら、自分が新たな価値を創造していく。それに挑戦するための材料を集めている。それは失敗するかもしれないが、人生は長いですから、いろいろなチャレンジをしていくネタを集めているのだと捉えてもらいたいと思っています。

 もう少し大きく括ってしまうと、自分の信念を表明し、語り続けるベテランであってほしいということです。未来に対してどう生きたいか、未来の自分から問いかけてほしい。リーダーとしての未来への思いや、「未来の世界はこうあるべきだ」という大局観や哲学。未来を見つめるリーダーとして社会をうならせる信念。少しオーバーかもしれませんが、このように大きなことを言ってほしいということです。

 そのようなことは、みんなが忙しい今の時代には誰も言わなくなってしまい、ただ「問題だ、問題だ」と言っているだけです。そこで、それをわれわれは「イノベーターシップ」というコンセプトにまとめ上げています。イノベーターシップとは、未来創造のための力量や志、熱い情熱を指しています。

 図のように3つを対比していますが、「マネジメント」は、しっかり仕事をしてきちんと目標を達成することです。「リーダーシップ」は、変化する状況に俊敏に対応して人々を率いていくことです。

 この2つは、世の中が変わらなければならない、変質させないといけないということに対しては何の発信もしていません。両方とも、ポイントはいかに数値目標を達成するかということなので、それではこの新しい時代には足りないということになる。そこで、「イノベーターシップ」が重要ではないか。ということで「イノベーターシップ」を掲げています。このライフシフトの時代、私がミドルシニアのメンバーの皆さん方に学んでほしいのは、究極的にはイノベーターシップです。これを学び、世の中を変えていくことにコミットしてほしい。

 だから、生活費が足りなくなりそうだとか、貯金が心配だから、ということではない。もちろん、それがスタートラインでもいいかもしれませんが、それは単に手段なので、「目的は何か」ということです。それは、われわれ一人ひとりが世の中を変える主体としてコミットしていくことです。それが、今の日本にこそ求められていると思います。欧米では(そうしたことに)どんどん取り組んでいるのです。

 今、この時代にあって、われわれシニアやミドルシニアはどんどん増えています。そういった人たちが、それについてコミットできていない日本というのは、問題ではないかと思います。ぜひ、そういったことに、皆さんと一緒に対面して考えていきたいと思います。


●デジタルリスキリングでフォーカスしたい「4S」


 このような観点から、単にデジタルのコードをあれこれ学べばいいというのではなく、よりフォーカスを絞ったリスキリングについてお伝えします。ここでは「4S」をデジタル的なリスキリングとしています。「Scenario、Science、Speed、Security」の4Sです。これらは日本が弱かったところに通じます。

 (「シナリオ(Scenario)」ですが、)例えば、未来志向がない。シナリオ(思考)が弱い。そこではビジョニングとして、時代認識を高める歴史・社会学・哲学の知見、あるいはビジネスモデルを学び直すことです。

 また、「サイエンス(Science)」も、日本はやや弱いところがあります。しかし、データや科学なしでは、合理的判断や意思決定ができず、しがらみから抜け出せません。今回、コロナでもなかなかデータを取れずにファックスなどを送っていたりして、何が本当に正解なのか、よく分からない。

 サイエンスの弱さに対しては、データサイエンスマインド、データサイエンススキル、論理思考、行動経済学などが非常に重要になってきます。このあたりは「デジタルリスキリング」としてよくいわれる領域だと思いますが、これだけではかなり狭いのです。

 3番目が「スピード(Speed)」ということで、混沌とした時代では、ビジョンや価値観を明確にし、コミュニケーションを通じて人々の意識改革を促さないと、何も変わらず漂流してしまうことになります。ここでは、リーダーシップやコミュニケーション、チェンジマネジメントなどの知見がないと、いくら変革や提言・諮問などが出てきても結局、何も起こらないというところです。これは、本当にリーダーの覚悟に関わってく...
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