●「ビジネススケールが問われる時代」に対応できていない
―― 西山さんは、歴史や哲学など実務とは別枠のバックボーンを持っていますね。
西山 自分で意識したわけではないですが、結果的にそうなっています。私の話は、どこかの本に書いてあるというものではありません。こういう話をする人は少ないかもしれませんが、そういう話だと思って聞いてください。世の中で言われていることを紹介するために来たわけではありませんから。
―― 日本はこの20~30年ずっと行き詰っています。その過程を西山さんは、経済産業省に入って以後、つぶさに見てこられました。
西山 つぶさかどうか分かりませんが、時代的には見ています。
―― 本来的に、社会全体を動かすOS(基本的なソフトウェア)がもう合わなくなってきている。それなのに、そのOSの上で育ったトップの人たちは、変わると自分たちが不要になるから変えたくない。そんな構造に今なっていて、それがあらゆる場所で連鎖のごとく起きているのではないでしょうか。
なぜこんな社会になってしまったのか。このあたりから「西山独自理論」をお話しいただけますか。
西山 いくつかあると思います。一つは、よく言われる「総合電機」的な話です。同じ会社の中でいくつもの部門を抱え、経営の注意がそれぞれの事業部に行き渡らない。事実上、その事業部門が独立する形になっている。すると独立した事業部門は、その事業部門を残すこと、潰されないことを至上目的にしてしまう。
典型的なのは、役員会です。それぞれの事業部門の代表者が座り、会社全体はどうでもいいと思っている。極端にいえば自分の事業部門に不利なことが決定しないようにするために参加している。
いろいろな会社がフルセットで持っていた、昔流にいえば多角化していた中で、1990年頃いきなり冷戦が終わり、いわゆるグローバル化が起こった。そうなると、一つ一つのビジネスのスケールが問われるようになります。それぞれの会社が持っている、たくさんの小ぶり、あるいは中くらいの事業部門で戦おうとしても、グローバル規模の競争には勝てません。
にもかかわらず、役員会でそれを議論しようとすると、「まさかうちの部門をやめるのではないでしょうね」といった話になり、その点ではみんなの利害が一致するので、どれもやめない。そんなことになっていて、これが一つです。
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