●リーダー候補として「変人」を探す意味
―― 千里を走る馬がいても、目利きがいないと取り立てられません。人材を抜擢できなくなっている日本の組織構造です。
特に古い会社であればあるほど、何年入社で、そこから上・下5年くらいの中で上げていく。要は同質性です。だいたい似たような高校・大学を出ているので、“歯型”も同じです。それが同じ者ばかりが会社の中にいて、競争している。そんなところに人材はいません。やはり目利きが、千里を走る馬をまず見つけることが重要。でも、見つけた人材を中に置けば、いじめに遭ったりしてだいたい(その才能・能力が)殺されてしまう。だから、いかにそうならないような仕組みをつくるか。そのあたりが大事です。
西山 私は(東京電力ホールディングス株式会社取締役等で)東京電力に4年間ほど行きましたが、その時にやったことが2つあります。一つは、「変人の会」という飲み会をつくったことです。
どの組織も組織である以上、同質的になります。会議に行っても、同じような感じの人が座っています。「この人たち、みんな親戚かな」と思うぐらい、同じような感じになるのです。そこである種、リーダー候補を探すためでもあるんですが、「変人の会」をつくりました。
リーダー候補の人たちに、「リーダーにもっと向いている人を探してください」と言っても、みんな「それは私でしょ」という話にしかなりません。「私たちではありません」とは絶対にならないので、「変人」として探せばいいかと思ったのです。
「あなた方は変人ですか?」と聞けば、「いえ、変人ではありません」となります。そこで「じゃあ、変人をちょっと入れましょう」ということになったのです。
ただ「変人」といっても、人事の人たちはどういう人が変人か分からない。あるいは「変人」と言うと、その人に悪いと思っているのかもしれません。選んでもらっても同じような人が集まってしまうので、このやり方はダメだと思いました。
たまたまですが、私の周りにはいろいろな人が話をしに来ていただけるので、ある時、「変人の友だちは変人に違いない」という勝手な理屈を立てました。そして私のところに来た人で、「君はどう見ても変人だ」と私が勝手に思った人に、「君の知り合いを5、6人集めろ」と言ったのです。すると実際、変人が揃うのです。
―― なるほど。
西山 変人を集める意味は、もう一つあります。東京電力もご多分に漏れず、縦割りです。部門間の交流がすごく少ない。ただ変人は横の切り口なので、変人を集めるといろんな部門の変人が集まり、交流できるのです。そういう縦ではない、横の切り口で集めるということをミクロの話でやっていました。
●細かい仕組みによってより良いリーダーが選ばれるわけではない
西山 もう一つ、これはどこまでできたかは別にして、次世代リーダー研修と、人材の評価、そして「何々部長にする」「執行役員にする」といった実際の任用については、一回で決めるというものです。例えば次世代リーダー研修というものは、たぶんどの企業でもやっています。2週間ぐらいかけて、いくつかの班に分けて研修を行う。「社長になったら何をします」といった演説をさせたりもします。
おそらくどの企業も研修を通じて、「この人は、こういう態度だった」という記録を取ります。一方で研修とはまったく別に、おそらく人事評価も行われていると思います。そして、「研修を受けた何々部長は、どういう人だ?」みたいな質問を担当役員に聞き、役員に「こんな人です」と言わせます。
やがて、あるポストが空くと、「誰にしようか」という話になるのですが、これはバカバカしいから1つにすることにしたのです。
つまり乱暴にいえば、次世代リーダー研修のときに社長以下を集めて見てもらう。そこで「面白い」と思う人がいれば、ポストを決めてしまう。そうすれば一回で終わります。
リーダーを決めるのに研修をやって評価もやって、というやり方では、いつまでたっても終わりません。
そういうことをやらないと、深く掘る話と同じになります。人事や登用の仕組みも、放っておくと硬直化する。これは日本人の美点でもありますが、きちんとやろうとするので、次世代リーダー登用の仕組みそのものが、すごく細かく硬い仕組みになる。いったい何を始めたのか、分からなくなってしまうのです。
でも、本来これは簡単なことです。リーダーを選ぶだけのことですから。研修で2週間見ようが2カ月見ようが、結局はやらせてみなければ分かりません。「おっ、あいつ、面白い。任命する」でいいのです。細かくやったからより良いリーダーが選ばれるという話を、私は聞いたことがありません。
織田信長が研修をやって、人材を評価したという話も聞いたことがない。お...