世界を混乱させるトランプ関税攻勢の狙い
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
そもそも関税とは?トランプ大統領の発想は帝国主義的?
世界を混乱させるトランプ関税攻勢の狙い(2)関税で誰が得をするのか?
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
現在の経済学の通念からすれば、トランプ関税を徹底すると、ほとんどの国が損をして、とりわけアメリカは大きな損をすると考えられる。にもかかわらず、なぜ関税なのだろうか。そもそも、関税とはいかなるものか。関税をかけるとどのようなことが起こるのか。トランプ大統領の思想は、歴史的に振り返ると、どのような時代と類似性があるのかなどを深掘りし、「関税」についての理解を深めていく。(全4話中第2話)

※この講義は緊急配信のため、講義テキストとしてレジュメを添付します。講義内容と一部異同もありますので、ご了承ください。
時間:9分50秒
収録日:2025年4月4日
追加日:2025年4月11日
≪全文≫
Ⅴ. 関税で誰が得をするのか

・トランプ氏は世界の国々が互いに関税をかけあえば、あたかも相互に得をすることができるような議論をしていますが、通常の理解では、トランプ関税を徹底すると、ほとんどの国が損をするでしょう。

・なぜなら、輸入する商品に関税がかけられると輸入国の消費者はより高い商品を買わされるので消費を減らすでしょう。輸出国から見れば需要が減少するので、その分、生産を減らします。したがって双方で消費と生産が減り、経済は収縮せざるをえません。結局、世界で起きることは、トランプ関税を広くかけると、インフレが起きると同時に生産と消費が減り、世界はインフレ下の不況、すなわちスタグフレーションに陥るおそれが大きいということです。

・こんな単純明快なことをトランプ大統領が知らない、もしくは理解していない、とすれば信じがたいことでしょう。トランプ氏がいつ、どこで経済学の基本を学んだかは知りませんが、彼が信ずる関税の効果についての考え方はどうも200年前の帝国主義時代に支配的だった「重商主義」の観念に基づいているように思います。

・それは技術的な優位性を確立した英仏のような帝国主義時代の覇権国が、従属国を従えて閉鎖的な経済圏を形成した「ブロック経済」の時代に活用された考えです。

・ブロック経済を率いる覇権国は自国を中心とするブロック経済を、外の経済圏からの関税攻勢から守ることができます。彼らが高い関税をかけてきても技術的優位性があるので、無理に関税を負担して輸入品を買わなくても済むからです。逆に、覇権国は技術的に優れた製品を高関税をかけて他の経済圏に売り込むことができ市場を拡大することができます。

・このようなブロック経済圏間の帝国主義的競争がやがて第一次そして第二次世界大戦につながったと言われています。

・世界大戦の惨禍を経験した世界では、経済学はもはや重商主義のような考え方を採用していません。現代の国際貿易の理論は、基本的に“比較優位(comparative advantage)”の考え方に基づいています。それは技術的に比較優位のある製品や方法に資源を集中して経済競争に勝ち、比較優位のないものは外から導入することです。

・そうすることで生産も消費も増え、世界経済は発展します。第二次大戦後の数十年間は、そうした自由で開かれた国際貿易をつうじて世界経済は飛躍的に発展し成長しまし...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(2)MAGAの矛盾と内戦の現状
MAGA内戦勃発…なぜトランプがMAGAの敵になってしまうのか
東秀敏
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治