半導体から見る明日の世界
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ファブレスとファウンドリー、2つに分かれる世界の半導体
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なぜ世界の半導体不足は起きた?台湾TSMCと日本復活への鍵
半導体から見る明日の世界(1)世界的な半導体不足と日本の可能性
政治と経済
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
世界的な半導体不足によって、一時、自動車や家電製品の生産に大きな影響を及ぼした。さらに新型コロナウイルスのパンデミックとロシアのウクライナ侵攻が拍車をかけ、半導体生産の不安は全世界に広がった。今や自動車から家電、さらには高機能化するスマートフォンなどにとって、半導体の価値はますます高まっている。かつて半導体王国として君臨した日本は今、見る影もないほどの凋落ぶりだ。そこで今シリーズでは、世界の半導体の現況と今後、そして日本の半導体立国としての可能性について考えていく。(全12話中第1話)
時間:9分00秒
収録日:2023年7月14日
追加日:2023年8月28日
≪全文≫

●世界的な半導体不足となった理由と台湾のTSMC


 皆さん、こんにちは、島田晴雄です。半導体についてはさまざまな問題があって、何がどうなっているのかちょっと分かりにくいので、それを今日はまとめて全部お話ししたいと思います。

 この数年、半導体について関心が非常に高まっています。1つは半導体不足が叫ばれていることです。特に2021年、2022年に多くの家電とか自動車が不足しました。注文しても手に入らないようになり、その理由は半導体だといわれていました。一方、この国の産業政策として、半導体の供給構造を強化すべきだというようなことを、政治家の皆さんが一生懸命言っているわけです。

 さらに、日本の半導体産業ですけれども、かつては世界の市場を席巻していた時代がありました。ところが今は、台湾や韓国に抜かれて、彼らの背中が見えないような状態になっており、果たして日本は半導体産業の立国として復活する可能性があるのかどうか、これは私たちにとっても大変重要な問題ですので、そのような問題を全部、今日は分かるようにお話を申し上げたいと思います。

 まず、自動車と家電でなぜ半導体が不足したのかということですが、一昨年(2021年)の前半に車が入手しにくくなったのは、台湾にある世界最強の半導体メーカーで、TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)という会社に世界中から注文が殺到したからです。

 自動車で一般に使われている半導体というのは28ナノというもので、1ナノ(メートル)は10億分の1メートルですから、ほとんど原子レベルで目に見えない小さなもので、一応そういう単位で測っているのです。28ナノというと中級品ですが、それがボトルネックになったのです。

 28ナノの半導体は自動車にも使いますが、家電製品などにもよく使われているので、それがTSMCに注文が殺到し、さすがに彼らも困って、それで世界に半導体不足が広がってしまったということです。

 ところが、それから1年もたたないうちに、28ナノの半導体、これは「ロジック半導体」といい、計算する、演算する、そういう半導体ですが、その不足が解消したのです。そうすると今度は何が起きたかというと、今度は「パワー半導体」と「アナログ半導体」が必要になるのです。

 パワー半導体というのは何かというと、電気自動車のモーターの制御をする半導体です。アナ...

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