●世界的な半導体不足となった理由と台湾のTSMC
皆さん、こんにちは、島田晴雄です。半導体についてはさまざまな問題があって、何がどうなっているのかちょっと分かりにくいので、それを今日はまとめて全部お話ししたいと思います。
この数年、半導体について関心が非常に高まっています。1つは半導体不足が叫ばれていることです。特に2021年、2022年に多くの家電とか自動車が不足しました。注文しても手に入らないようになり、その理由は半導体だといわれていました。一方、この国の産業政策として、半導体の供給構造を強化すべきだというようなことを、政治家の皆さんが一生懸命言っているわけです。
さらに、日本の半導体産業ですけれども、かつては世界の市場を席巻していた時代がありました。ところが今は、台湾や韓国に抜かれて、彼らの背中が見えないような状態になっており、果たして日本は半導体産業の立国として復活する可能性があるのかどうか、これは私たちにとっても大変重要な問題ですので、そのような問題を全部、今日は分かるようにお話を申し上げたいと思います。
まず、自動車と家電でなぜ半導体が不足したのかということですが、一昨年(2021年)の前半に車が入手しにくくなったのは、台湾にある世界最強の半導体メーカーで、TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)という会社に世界中から注文が殺到したからです。
自動車で一般に使われている半導体というのは28ナノというもので、1ナノ(メートル)は10億分の1メートルですから、ほとんど原子レベルで目に見えない小さなもので、一応そういう単位で測っているのです。28ナノというと中級品ですが、それがボトルネックになったのです。
28ナノの半導体は自動車にも使いますが、家電製品などにもよく使われているので、それがTSMCに注文が殺到し、さすがに彼らも困って、それで世界に半導体不足が広がってしまったということです。
ところが、それから1年もたたないうちに、28ナノの半導体、これは「ロジック半導体」といい、計算する、演算する、そういう半導体ですが、その不足が解消したのです。そうすると今度は何が起きたかというと、今度は「パワー半導体」と「アナログ半導体」が必要になるのです。
パワー半導体というのは何かというと、電気自動車のモーターの制御をする半導体です。アナログ半導体というのは、最近の電気自動車は「コネクテッドカー」といわれますが、インターネットの塊のようなものです。その需要が今度はどっと出てくるのですが、1つの半導体は不足を解消したのですが、今度は、今申し上げたようなものが出てくるだろうということです。
半導体は市況製品ですから、どの半導体がどういう需要でどうなったかということで、足りなくなったり、余ったりするということが起きていたのです。これを、われわれ一般市民が感じていたことです。
●メモリ半導体からロジック半導体の時代へ
そして皆さん、何度も聞いたことがあると思いますが、「半導体を制する者は世界を制する」といわれるのです。
これは政治家がよく使う言葉ですが、半導体というものは戦略製品で、ものすごく重要な製品になっています。半導体には大きく分けて3つの種類があり、1つは「メモリ半導体」、もう1つは「ロジック半導体」、もう1つは「パワー半導体」です。
メモリ半導体というのはコンピュータで使っている半導体です。ロジック半導体は、これも1種のコンピュータなのですが、実は意外なことに、世界最先端の半導体というものは、アップルのスマートフォンなどが使っているのです。なぜかというと、スマートフォンはものすごくいろんな機能があります。ですから、あれは判断能力がすごいのです。最先端のミサイルの判断能力よりもすごいものを持っているのです。それがロジック半導体です。パワー半導体というのは、今流行りの電気自動車の動力の制御です。
それらがあるのですが、いずれにしてもこれは基本的なことなので、これらの戦略製品を支配するかしないかで、国力を支配するようなことになってくるのです。
実は今、世界で最先端の半導体のなんと9割を、台湾にあるTSMCという会社が作っているわけです。ですから、台湾がどうなるかによって、世界の最も戦略的な物資の配分のあり方が変わるという、大変な問題をはらんでいます。 この問題はあとで詳しくお話しします。
もう1つは、実は日本は1980年代、もう今から40年ほど前ですけれども、一時世界の半導体の市場を圧倒的に席巻していた時代がありました。それはどういう半導体かというと、メモリ半導体ですが、当時は「DRAM」といっています。「ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ」といわれるDRAMです。このDRAMは、世界で日本にしか...