●壮大なビジョンを実現するイーロン・マスクの行動力
―― 皆さま、こんにちは。
桑原 こんにちは。
―― 本日は桑原晃弥先生にイーロン・マスクについてのお話をいただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
桑原 よろしくお願いいたします。
―― マスクでございますけれども、スペースXでの宇宙開発や、テスラの電気自動車などが有名ですが、ひと言でいうと、何が凄いのでしょうか。
桑原 このあと年表を使ってお話しさせていただくのですが、アメリカに19歳で渡った時には、学歴もお金も縁故もなにもありませんでした。マスクはそういう状態から自分で会社をつくって、そこで得たお金の全てを次の事業に注ぎ込んでいきました。本来であれば、お金持ちとして、お金を手元に残しながら次の事業に向かうと思いますが、マスクの場合はお金を全て投入して、自分のビジョンを実現するために全身を傾けていく。その凄まじい構想力、行動力がマスクの凄さなのではないかと思います。
―― そうすると、その主な動機はお金儲けではないわけですか。
桑原 そうですね。マスクは、子どもの頃からSFが好きということもあるのですが、「世界を救う」とか「人類を救う」とか、そういう非常に大きな夢を持っていました。そのために自分に何ができるのかということで、例えばITでも非常に傑出した才能を持っていましたが、それでは世界を救えないということで、ロケットや電気自動車など、国家レベルの事業へと進んでいきました。そういう壮大なビジョンを掲げてそこに向かっていく。それがマスクの凄さだと思います。
●南アフリカで生まれ、シリコンバレーへ憧れてアメリカへ渡る
―― ありがとうございます。では、まずはマスクの生涯を見てまいりたいと思います。まず出生からペイパルまでということですが、1971年のお生まれということですね。
桑原 はい。南アフリカで生まれたということで、割と珍しいことだと思うのですが、当時の南アフリカは、アパルトヘイトがあり、まだあまり民主化されていませんでした。ただ、父親がエンジニアだったということもあって、コンピュータやプログラミングに非常に興味を持って、それを独学で学び始めました。そして子どもの頃につくったソフトウェアが雑...
(桑原晃弥著、プレジデント社)