「人前で失敗ができる会社」――これは宇宙飛行士の野口聡一氏がスペースXという会社を評した言葉である。イーロン・マスクは、「何かを成し遂げるために必要なのは『失敗を恐れない心』と『失敗に学ぶ勇気』」と言う。その真意とは? 今回から2話にわたり、夢を実現させるために懸命に動き続けるマスクの言葉について解説する。(全7話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
≪全文≫
●『夢を語る』以上に『実行すること』
―― 続きまして、イーロン・マスクの言葉を見ていきたいと思います。
まずは、「求められるのは『夢を語る』以上に『実行すること』」だというところですね。
桑原 はい。
―― いくつか言葉がございますが、1つ目は「あなたが会社をつくるつもりなら、最初にやってみるべきことは、実際に動く試作品をつくることです」。
桑原 これは例えばトヨタなどでもよく言っていますが、アイデアがあったらモノをつくってみなさいと。モノづくりにおいては一番大事なことです。自分がすごいアイデアを持っているのに、それを誰も分かってくれない、みんなが協力してくれない、という思い、不満を持っているビジネスパーソンの方は多いかもしれませんが、マスクのやり方は、ロケットにしても車にしても、語るだけではありません。
マスクは非常にITに強い人なので、パソコン画面上で何でもつくれるし、何でも動かせると言っています。しかし、「それではダメだ。人を感動させるのは動く試作品なのだ」と。
確かにそうで、もしテスラが「ロードスター」というかっこいい車ではなく、ダサい電気自動車をつくったとしたら、おそらく電気自動車の時代は来ませんでしたし、誰も見向きもしなかったでしょう。ところが、あのハリウッドのスターたちが欲しいと言うようなすごい車をつくるから、トヨタの豊田章男社長をはじめ、誰もが感動して、「電気自動車はすごいね。売れるね」となるわけです。
そのように、マスクはアイデアがあったらすぐに実行するし、それを形にする才能が優れているわけです。そして、それがマスクにとっては夢を叶えるための一番の方法だと、若い学生たちにもよく言っていることです。
―― そうすると、スペースXのロケットも最初は3回失敗しましたが、失敗してもいいわけですね。実際にまずやってみてどうなるかが大事だと。
桑原 そうですね。宇宙飛行士の野口聡一さんが、スペースXという会社は、「人前で失敗ができる会社だ」と言っています。
―― なるほど。
桑原 普通だったら失敗は隠しますね。
―― はい。
桑原 普通は隠そうとするし、見えないようにしますが、スペースXは、堂々と公の場で実験をして、堂々と失敗すると。その代わり、その失敗で何が問題かをすぐ次には解決し...