テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

「グリーンディール」にみる気候変動対策の経済的価値

気候変動問題から考えるSDGs(1)COP26と認識の変化

伊藤元重
東京大学名誉教授
情報・テキスト
地球規模の問題といえば、エネルギー消費による気候変動が筆頭に上がる。従来、気候変動問題は供給サイドの脱炭素化が主な対策だったが、現在では需要サイドや社会全体の行動変容が求められるようになった。グリーン・ファイナンスやコーポレートガバナンスは、環境問題を監視・解決する力である。また、欧州では「グリーンディール」という考え方があり、気候変動対策に積極的に取り組むことは、成長に対してマイナスではなくむしろプラスになる可能性もあるという。(全2話中第1話)
時間:09:05
収録日:2022/04/07
追加日:2022/06/06
タグ:
≪全文≫

●気候変動問題は企業の投資行動や投資家の見方に影響を与えている


 伊藤です。よろしくお願いします。今日は気候変動問題について、少しお話しさせていただきたいと思います。

 世の中では「SDGs投資」のように、気候変動問題だけではない、より広い範囲の議論がなされています。しかし、まずは気候変動問題についてお話をさせていただければ、他のケースについても、同じような議論をできるのではないかと思っています。

 なぜ気候変動問題についてお話をするのか。これは言うまでもないことですが、2021年の1年間の世界で、いろいろなことが大きく動き始めました。単に政府の政策レベルだけの話ではなく、もっと重要なこととして、企業の投資行動や一般の投資家の企業に対する見方についても非常に大きな影響が及んでいるということだろうと思います。

 ご存じのように2021年には「COP26」が開催され、主要国との間で気候変動問題に大きな前進がありました。日本の国内を見ると、2020年10月に菅総理が「2050年までに日本を実質カーボンゼロにする」つまり温室効果ガス排出を実質ゼロにするという目標を掲げました。これは大きな出発点になりました。多くの企業にとって、気候変動問題は非常に重要ですが、「2050年までにカーボンゼロ」という目標は、これまでの相場観よりかなり進んだものとして受け止めてもらえたわけです。

 (菅内閣によるカーボンニュートラル宣言の)半年後の2021年4月にはアメリカ主導で「気候変動サミット」が行われました。この結果、世の中の議論としては、2050年にカーボンゼロを実現するために、2030年までにどのような目標を作らなければならないかということに集中しました、日本は、2013年比で46パーセント削減という目標を掲げました。

 この2030年目標には非常に大きな意味があります。2050年というと28年後の話ですから、目標を実現するための、いろいろな技術革新や新しいものがそれまでに出てくることが期待できます。しかし、2030年目標というと、8年後の話です。これに対しては、今ある技術や今ある手法を用いて計画的に、かつかなり無理をしても進めていかなければならなくなるわけです。


●気候変動問題に対する世の中のアプローチの仕方が大きく変化


 こうしたことが企業の行動についてどういう意味があるのか。一つの重要なポイントは、この気候変動問題に対する世の中のアプローチの仕方が大きく変わってきたことです。

 これまではどちらかというと供給サイド中心のアプローチでしたが、経団連や政府の人々が、いろいろな産業の方々と相談を重ねるようになります。その結果、産業ごと、あるいは企業ごとの歳出削減の目標を構築し、それぞれのテーマを実現していくための計画を立てるという具合に、一つ一つ手が打たれるようになりました。

 例えば鉄鋼でみれば、どれだけエネルギー効率を上げていくのか。あるいは自動車でいくと、1台当たりの排出量をどうやって抑えていくのか。さらに言えば、どのようにハイブリッドや電気自動車にシフトしていくのか。あるいは電力でいえば、石炭から石油、石油から天然ガス、さらに可能であれば再生エネルギーへとどうやってシフトしていくか。このように産業ごとに細かく作業を決めていくのです。

 このような作業において、供給サイドのアプローチは極めて重要ですが、それだけではなかなか目標が実現達成できないことは、多くの人が理解している通りです。そこで、需要サイドからのアプローチが大きく問題になってきます。

 需要サイドというのは、もちろん一般の国民がCO2削減につながる行動を進めていくこともあります。しかし、より早急な効果を持たせるためには、例えば金融における「グリーン・ファイナンス」、あるいは「コーポレートガバナンス」を通して企業の行動を監視するなり、投資家が企業の行動をチェックするというようなことを、仕組みの中に組み込んでいくことが重要になってくるわけです。

 こうした議論の延長線上には、「カーボンプライシング」があります。中でも注目されているのが「炭素税」といわれる強力な仕組みの導入です。温室効果ガス排出量に応じて税金をかけ、価格を調整するので、そうした経済活動をする企業にとっては非常にマイナスになる。このようなことを通じて、いわゆる気候変動問題へのアプローチに大きな違いがあることは理解しなければいけません。


●積極的な気候変動対策はプラスの経済成長をもたらす可能性も


 これが10~15年前であれば、どうだったでしょう。当時も気候変動問題に対しては非常に大きな問題意識がありましたが、温室効果ガス対策をしなければ地球の気候変動が大変なことになって、われわれの住む地球が大変なことになるという認識でした。

 気候が変わるほどの大きな...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。