気候変動問題から考えるSDGs
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「グリーンディール」にみる気候変動対策の経済的価値
気候変動問題から考えるSDGs(1)COP26と認識の変化
伊藤元重(東京大学名誉教授)
地球規模の問題といえば、エネルギー消費による気候変動が筆頭に上がる。従来、気候変動問題は供給サイドの脱炭素化が主な対策だったが、現在では需要サイドや社会全体の行動変容が求められるようになった。グリーン・ファイナンスやコーポレートガバナンスは、環境問題を監視・解決する力である。また、欧州では「グリーンディール」という考え方があり、気候変動対策に積極的に取り組むことは、成長に対してマイナスではなくむしろプラスになる可能性もあるという。(全2話中第1話)
時間:9分05秒
収録日:2022年4月7日
追加日:2022年6月6日
≪全文≫

●気候変動問題は企業の投資行動や投資家の見方に影響を与えている


 伊藤です。よろしくお願いします。今日は気候変動問題について、少しお話しさせていただきたいと思います。

 世の中では「SDGs投資」のように、気候変動問題だけではない、より広い範囲の議論がなされています。しかし、まずは気候変動問題についてお話をさせていただければ、他のケースについても、同じような議論をできるのではないかと思っています。

 なぜ気候変動問題についてお話をするのか。これは言うまでもないことですが、2021年の1年間の世界で、いろいろなことが大きく動き始めました。単に政府の政策レベルだけの話ではなく、もっと重要なこととして、企業の投資行動や一般の投資家の企業に対する見方についても非常に大きな影響が及んでいるということだろうと思います。

 ご存じのように2021年には「COP26」が開催され、主要国との間で気候変動問題に大きな前進がありました。日本の国内を見ると、2020年10月に菅総理が「2050年までに日本を実質カーボンゼロにする」つまり温室効果ガス排出を実質ゼロにするという目標を掲げました。これは大きな出発点になりました。多くの企業にとって、気候変動問題は非常に重要ですが、「2050年までにカーボンゼロ」という目標は、これまでの相場観よりかなり進んだものとして受け止めてもらえたわけです。

 (菅内閣によるカーボンニュートラル宣言の)半年後の2021年4月にはアメリカ主導で「気候変動サミット」が行われました。この結果、世の中の議論としては、2050年にカーボンゼロを実現するために、2030年までにどのような目標を作らなければならないかということに集中しました、日本は、2013年比で46パーセント削減という目標を掲げました。

 この2030年目標には非常に大きな意味があります。2050年というと28年後の話ですから、目標を実現するための、いろいろな技術革新や新しいものがそれまでに出てくることが期待できます。しかし、2030年目標というと、8年後の話です。これに対しては、今ある技術や今ある手法を用いて計画的に、かつかなり無理をしても進めていかなければならなくなるわけです。


●気候変動問題に対する世の中のアプローチの仕方が大きく変化


 こうしたことが企業の行動についてどういう意味があるのか。一つの重要なポイントは、この気候変動問題に対...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(2)MAGAの矛盾と内戦の現状
MAGA内戦勃発…なぜトランプがMAGAの敵になってしまうのか
東秀敏
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治