●限界を超え始めた最先端の半導体技術
ところが、後工程にはパッキングするなどいろいろなものがあるのですが、今、後工程がものすごく脚光を浴び始めているのです。なぜかといいますと、こういうことです。(最先端技術は)2ナノという世界です。1ナノは10億分の1メートルですから、2ナノはそれに近いのですが、(実は)今、世界で3ナノまではTSMCで作れるようになりました。しかし、アメリカの会社は作れません。韓国のサムソンもそこに近づいていますが、これはもう限界ではないかと専門家たちは見ているのです。
これはゴードン・ムーアという人がいて、「ムーアの法則」というものを聞いた方がおられると思いますが、ムーアはインテルという会社を創業した1人です。科学者でもあるこの人は、チップに盛るトランジスタの数は、2年に一度倍増していくということを言いました。そうすると、2年で2が4になり、4年で8になり、6年で16になります。
この人は2023年に亡くなったのですが、彼は1956年頃にそのムーアの法則を言い出しました。これを計算すると面白いのです。2年に一度ですから、60年かそれくらいで計算すると、10億倍を超えるのです。つまり10億倍にトランジスタが増えているのです。
これ以上は無理ではないかとされてきましたが、実はもう超え始めているのです。オランダのASMLは多分超えています。しかし、必死でやっていても、わずか1カ所でもトランジスタの機能が十分じゃないと、このチップはダメになってしまいます。ですから、かなり難しいのです。
そこで今、世界の科学者が考え始めたのが、立体半導体(3次元半導体)というものです。なぜ3次元半導体なのかといいますと、2センチ角で5層、6層、10層、20層と、上に足していって高層ビルみたいにしていくのです。そうすると横に電流が流れる、縦に流れる、距離は短いということで、効率が非常にいいのです。
●世界の半導体を陰で支える日本の技術力
このようなことを考えました。ただ、これは後工程で作ります。チップはできていますから、そのチップを重ねていくのです。そこでチップの接着剤をどうするか、さらに電流がきちんと流れるように補強する薬品をどうするかとか、これは圧倒的に日本が強いのです。ですから、後工程が急に脚光を浴びるような状況になりだしたのです。
今申し上げたのはこの図表で分かりますが、このAMDという会社はアメリカ、グラフコアはイギリスの会社、TSMCも最近この3Dをやり始めました。この考え方はアメリカやイギリスのものでやっていて、インテルもついていっていますが、これをやるためにTSMCはどうしたかというと、日本のつくば市に研究所を作ったのです。
なぜかというと、日本にはこのようなものを得意とする企業がたくさんあるからです。だから、それが最初なのです。TSMCが日本に来たかったのは、このつくば市に来たかったからで、九州に来たのは補助金がどんと出たからにすぎません。
そして、ソニーが画像センサーでTSMCと組んでいますが、これを3次元のところでうまく使うということです。また、大日本印刷はインターポーザですが、要するにセメントというか、接着剤みたいなもので、これも10億分の1メートルの世界ですから、精度がもう気が遠くなるようなほどに細いわけです。それをピシッと接着させるのは、すごい技術なのだそうです。
これはキヤノンで、インターポーザが抜けたときの露光装置です。こういう類いのものは、圧倒的に日本が強いのです。
それから、東京応化工業とJSRという会社が、先端パッケージを組み合わせるときに、そこにレジストという薬品を塗るのですが、その薬品を日本が世界で52パーセント(33+29パーセント)のシェアを持っています。
また、モールディングというものですが、これは止めて付けるものですけれども、それも日本が圧倒的に強いのです。こういう全然目立たないのですが、「これがないと半導体を作れない」という技術が20~30くらいあるわけです。ここはほとんど日本なのです。そのような世界が1つあります。
●3Dの時代でますます注目される日本
ということで、大体理解できたのではないかと思います。この微細加工をみんなが競争しているのですが、今はTSMCが圧倒的に先端を走っています。そこで1つストーリーがあります。オランダのASMLがそういう機械を作って、ものすごく微細なものができますと言ったのですが、では実際に誰がそれをやれるのかということです。そこでTSMCはその機械を数年前に買いました。今100台くらい持っているそうです。
このレベルになると、マスキングをやるときに何十回もやると前に言いましたが、あれは全部1工程ずつなのですけれども、その1工程を微細なレベルでやるには最...