近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
実は挙国一致内閣は弱体だった…そして大政翼賛会も挫折
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(4)政党政治の強さと挙国一致の弱さ
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
一般的な歴史認識では、政党政治が軍の圧力により潰れ、軍の独裁が始まったとあるが、実は政党政治はそのように弱いものではなく強力だった、と片山杜秀氏は言う。当時の政党政治、挙国一致内閣の実態、そして大政翼賛会の挫折に迫る。(全9話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分43秒
収録日:2021年5月31日
追加日:2021年8月25日
≪全文≫

●政党内閣は強力な政治を発揮できた


―― 意思決定が曖昧化してくると、まさに省庁の縦割りの話にもなってくるのですが、政府もどこが強いのか分からず権力が分かれています。天皇陛下がそれをまとめて、ドイツやロシアの皇帝のように強く命令するかというと、そういうことではなく、あくまでも大臣が上げてきたものを認可するのがベースとなる。これで本当に総力戦、国家を挙げての戦いができるのか。こういったことで日中戦争以降、国家としてどのように運営していけばいいか分からない局面になってくるのですね。

片山 これは本当に難しい問題です。近代日本における一般的な歴史の解釈は、(教科書にもよく書いてありますが)政党内閣がデモクラティックなものとしてあり、これに軍部や右翼のテロリストなどが次々と圧力をかけていき、ついに5.15事件で犬養毅首相が白昼堂々殺されたことによって政党内閣が潰えて、その後は軍部独裁の流れになった、というものです。

 ですが、これは別の解釈が可能です。私がいつも自分の勉強のつもりで読んでいる当時の政治評論などによく書いてあることですが、むしろ政党内閣の時代はもっとも強力な政治が実現していた状況であったというのです。

 つまり、憲法的には保証されていないのだけれど、原敬以後の政党内閣の時代は(途中で例外として清浦奎吾の超然内閣などが挟まりますが)、基本的にずっと政党本位の内閣が作られ、政党の発言力が強い時代です。しかも衆議院の与党のリーダーが総理大臣になる。貴族院ではなく、国民に選ばれている衆議院の与党が内閣を組織することが「憲政の常道」といわれた時代になります。

 それまでは、日本は行政と立法が互いに、行政は立法に、立法は行政に屋根を伸ばさないように厳しい縦割りにして、超然内閣で、議会でどの政党が与党になろうが、与党の総裁を総理大臣にするなどということは憲法で保証しない。どの与党が強くなっても、それとは関係のない人が総理大臣になり、関係のない組閣をすることができる。これが原敬から以後は、背景にある国民の声を政府が受け取らないように運営していると見えることが、大日本帝国にとってマイナスであるという判断によって、正当に衆議院の与党に内閣を組閣させようということになっていったのです。

 これは、戦後の議院内閣制の先取りといえます。立法権で、衆議院で力を持っている政...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治