近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
伊藤博文は大日本帝国憲法の致命的な問題点に気づいていた
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(2)明治憲法体制の弱点
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
第2次近衛内閣時代に無任所大臣を活用するという体制を試みたが、そもそも、この発想に至ったのは、当時の大日本帝国憲法(明治憲法)体制では行政がうまくいかないことが明らかになってきたからだった。そのことに憲法をつくった当の本人、伊藤博文も気づいていた。その要因は大日本帝国憲法第55条にある。今回は明治憲法体制の本質とその欠陥について解説する。(全9話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分35秒
収録日:2021年5月31日
追加日:2021年8月11日
≪全文≫

●障害になった大日本帝国憲法第55条


片山 (無任所大臣の設置について)もう1つ言っておきます。実は明治憲法体制の内閣制度は、縦割りになる上に、総理大臣のリーダーシップが弱いということを、作った本人が問題だと思った経緯があります。明治時代に伊藤博文が「これはダメだ。うまくいかない」と途中で分かってしまった。しかし、1度作った憲法はもう変えられません。

 何が障害か。大日本帝国憲法第55条に「国務各大臣は、天皇を補弼(ほひつ)し、その責任を負う」とあります。つまり“国務大臣はみな横並びだ”と解釈できる文面になっているのです。

 「総理大臣がリーダーシップを取る」というニュアンスの文がどこか1カ所でも書いてあれば、総理大臣が内閣を調整し、各官庁の大臣が官庁の役人に対して強く出られないとしても、「トップがこうしろと言っているのだから、わが官庁はこうしないとダメなのだ」と大臣として言える。そうすれば、縦のラインが機能し、上の意思が下に達していくことができる。

 しかし憲法上、国務大臣はみな横並びとなると、総理大臣は調整役以上のことはできません。法解釈上、総理大臣が各大臣に命令を下したり、必ず総理大臣に相談して総理自らが「はい」と言わなければやってはいけないということが、できない仕組みだったのです。もちろん大胆に解釈改憲すればできたかもしれませんが、それは難しいのです。

 伊藤博文は、総理大臣の権限をより強めるために、重要なことは必ず総理大臣に相談しなければ進められないといった具合に、(無任所大臣を積極的に置くこととは少し違うけれども)総理大臣がリーダーシップを取って縦割りをやめさせていく機能を、内閣の中に足していかなければ機能しないだろうと考えました。

 今から思えば、あるいは大東亜戦争当時から思えば、伊藤博文は鋭い指摘をしています。統帥権の独立があるので、例えば作戦指導は参謀総長や軍令部総長が全権を持っていることだから、内閣は口を出せないことになっています。極端にいえば、「だから内閣は知らされなくてもいい」ということになる。だから、昭和19(1944)年、20(1945)年になっても、例えば台湾沖航空戦の戦果などを当時の小磯国昭首相は知らなかったし、続く鈴木貫太郎首相も(戦争の中身が)どうなっているか分からないという状況が...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
歌舞伎はスゴイ(1)市川團十郎の何がスゴイか(前編)
市川團十郎の歴史…圧倒的才能の初代から六代目までの奮闘
堀口茉純
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之

人気の講義ランキングTOP10
これからの社会・経済の構造変化(2)経済的利益と社会課題解決の両立へ
利益か社会課題解決か…かつての日本企業の美点を取り戻せ
柳川範之
和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1
ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?
渡部泰明
「進化」への誤解…本当は何か?(9)AI時代の人間と科学の関係
科学は嫌われる!? なぜ「物語」のほうが重要視されるのか
長谷川眞理子
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(8)秀長の死の影響と秀吉政権の瓦解
「家康対奉行」の構図は真っ赤な嘘!? 秀吉政権瓦解の真相
黒田基樹
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIは間違いが分からない…思考で大事なのは訂正可能性
中島隆博
独裁の世界史~未来への提言編(1)国家の三つの要素
未来を洞察するために「独裁・共和政・民主政」の循環を学べ
本村凌二
歌舞伎はスゴイ(4)歌舞伎のサバイバル術(後編)
江戸時代の歌舞伎にも大波乱が…どうやって生き残ったか
堀口茉純
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎