近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質
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悲惨な末路につながった東條英機内閣での兼職と省庁再編
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(6)東條内閣で行われた行政改革
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
近衛内閣から無任所大臣の活用という発想を受け継いだ東條内閣。その東條内閣で進められたのは「兼職」と「省庁再編」だった。これは結果として、日本が悲惨な末路をたどることにつながったのだが、それはなぜか。(全9話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分19秒
収録日:2021年5月31日
追加日:2021年9月8日
≪全文≫

●東條内閣では「兼職」が進められた


片山 それから「兼職」です。実際に東條内閣がさかんに兼職を行い始めました。

 例えば内閣と軍について、行政と軍令は別々のものです。ですが憲法上、陸軍参謀総長と陸軍大臣と総理大臣を兼ねてはいけないとは、どこにも書いていない。ということは、大政翼賛会のような強力な政治組織をつくることは日本の政治風土的に無理だ、つまりナチスのような政治組織は無理だということで否定されてしまったら、あとは人間が兼職するしかありません。陸軍の参謀本部も陸軍省のトップも総理大臣も同じ人にすればいいではないか、ということです。

 ここで東條英機や嶋田繁太郎といった人たちの人事が出てくるわけです。つまり、軍令と軍政、さらに軍政だけではなく内閣の中で軍以外の行政に絡むことも、1人の人間が兼ねていく。日本の弱い政治制度を超えていくことについて、さまざまな官僚が面白いアイデアを出しました。けれども、実際に乗り越えるために速攻でできることとして東條英機が行ったことは兼職ですね。

 この兼職は一応、理屈としてはうまくいきそうですが、現実としてはうまくいかないに決まっています。なぜなら、仕事が割れているのは、1人の人間ではこなせないからです。これが近代国家の複雑性の問題なのです。

―― 忙し過ぎますよね。

片山 そうです。頭がパンクしてしまいます。それらを1人で全て行うのは、いくら「カミソリ東條」でもできません。

 しかも、東條英機に反対する勢力からすると、「大政翼賛会で打倒した天皇陛下に畏れ多いことを、東條英機は兼職でやろうとしているではないか。近衛以上に東條はけしからん」ということになって、反東條運動が起きてしまうわけです。その反東條運動を抑えようとして、憲兵隊を使う。憲兵政治でさまざまに脅迫をしてみたり、中野正剛といったうるさい者に圧力をかけてみたりする。こういうことを行って、ますます東條ファッショ、日本のヒトラーなどと言われてしまう。

 「日本は、ナチスのように全て1人で行うのとは違う。みなで分担しながら、それぞれの職権で、輔弼して、調和して、横の調整などでエネルギーを使わずに懸命に自分の職権で突き進んで、最後に良い答えが出ることを信じる。それが日本だ」。これが、大政翼賛会に反対した人や、東條ファッショに反対した人の理屈です。分権こそが正しい、強...

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