近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質
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東條内閣で官僚・山崎丹照が構想した強力政治実現への改革
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(5)大臣を増やすか、減らすか
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
「無任所大臣の活用」という発想は近衛内閣から東條内閣に引き継がれた。しかし、東條内閣時代はそれに異を唱える役人も登場した。官僚の中枢において、いわゆる「国家デザイン戦略」を担当していた山崎丹照という人物だ。彼は「無任所大臣は失敗である」と言ったが、そこにはどのような考えがあったのか。(全9話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分04秒
収録日:2021年5月31日
追加日:2021年9月1日
≪全文≫

●「無任所大臣がいたから政治がうまくいった」という例はない


―― ここは現代の日本人として理解しておくべきだと思うのですが、近衛文麿が行った新体制運動とは何か。

 そもそも政党内閣が強かったけれども、信を失った、あるいは失敗だった。ちょうど大恐慌の時期とも重なり、これではいけないから新しいものが必要だとなりました。ですが、近衛のもともとの思惑としては、各省庁がバラバラで国としての戦略が打ち出せないので、大政翼賛会的なものをつくりさえすれば、軍部の横暴といったものも治められ、それによって国としての方向性を出せるだろうという理想があったのですね。

片山 そうですね。日中戦争を解決し、第2次世界大戦に入っていく世界の状況に備えるためには、政府と軍が別々であったり、政府の中で大幅に意見が違っていたり、枢密院まであったり、衆議院や貴族院が勝手なことを言っていたりするのではいけないわけです。これは明治国家体制のデザインの失敗なので、だから新体制運動は必要だという。これは、左翼や右翼を超えて、当時真面目に政治を考えている人はみなそう思っていたのです。

―― 国がバラバラだとどうにもならないということで、その発想が生まれた。その中で無任所大臣が、いわゆる国務大臣と扱われるようになります。そして新体制運動、大政翼賛会の運動も中途半端な形になっていくのですが、そこで無任所大臣が本当に機能したのかどうか。理論としては理解できますが、現実問題としては機能したのでしょうか。

片山 現実問題としては、近衛内閣でも、東條内閣でも、小磯内閣でも、鈴木内閣でも、終戦処理を行った東久邇宮内閣でも、さらにいうと、その後、無任所大臣を最大限閣僚に入れて活用しようとした吉田茂長期政権でも、無任所大臣がいたからうまくいったという例はありません。

 これは政治史の理解の仕方の問題で、「無任所大臣がこういう局面でこれほど活躍したからこそ、やはり無任所大臣は偉かった」という研究をなさる方もいるでしょう。ですが私の知る限りでは、積極的にそういえることはなかった。空振りに終わったと思います。

 東條内閣の時代に移ると、東條内閣は無任所大臣の活用を近衛内閣から引き継いで考えており、その流れは鈴木貫太郎内閣まで受け継がれます。しかし東條内閣の下で、「無任所大臣を活用するのは無理だろう。別のことを考えるべ...

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