近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
東條内閣で官僚・山崎丹照が構想した強力政治実現への改革
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(5)大臣を増やすか、減らすか
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
「無任所大臣の活用」という発想は近衛内閣から東條内閣に引き継がれた。しかし、東條内閣時代はそれに異を唱える役人も登場した。官僚の中枢において、いわゆる「国家デザイン戦略」を担当していた山崎丹照という人物だ。彼は「無任所大臣は失敗である」と言ったが、そこにはどのような考えがあったのか。(全9話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分04秒
収録日:2021年5月31日
追加日:2021年9月1日
≪全文≫

●「無任所大臣がいたから政治がうまくいった」という例はない


―― ここは現代の日本人として理解しておくべきだと思うのですが、近衛文麿が行った新体制運動とは何か。

 そもそも政党内閣が強かったけれども、信を失った、あるいは失敗だった。ちょうど大恐慌の時期とも重なり、これではいけないから新しいものが必要だとなりました。ですが、近衛のもともとの思惑としては、各省庁がバラバラで国としての戦略が打ち出せないので、大政翼賛会的なものをつくりさえすれば、軍部の横暴といったものも治められ、それによって国としての方向性を出せるだろうという理想があったのですね。

片山 そうですね。日中戦争を解決し、第2次世界大戦に入っていく世界の状況に備えるためには、政府と軍が別々であったり、政府の中で大幅に意見が違っていたり、枢密院まであったり、衆議院や貴族院が勝手なことを言っていたりするのではいけないわけです。これは明治国家体制のデザインの失敗なので、だから新体制運動は必要だという。これは、左翼や右翼を超えて、当時真面目に政治を考えている人はみなそう思っていたのです。

―― 国がバラバラだとどうにもならないということで、その発想が生まれた。その中で無任所大臣が、いわゆる国務大臣と扱われるようになります。そして新体制運動、大政翼賛会の運動も中途半端な形になっていくのですが、そこで無任所大臣が本当に機能したのかどうか。理論としては理解できますが、現実問題としては機能したのでしょうか。

片山 現実問題としては、近衛内閣でも、東條内閣でも、小磯内閣でも、鈴木内閣でも、終戦処理を行った東久邇宮内閣でも、さらにいうと、その後、無任所大臣を最大限閣僚に入れて活用しようとした吉田茂長期政権でも、無任所大臣がいたからうまくいったという例はありません。

 これは政治史の理解の仕方の問題で、「無任所大臣がこういう局面でこれほど活躍したからこそ、やはり無任所大臣は偉かった」という研究をなさる方もいるでしょう。ですが私の知る限りでは、積極的にそういえることはなかった。空振りに終わったと思います。

 東條内閣の時代に移ると、東條内閣は無任所大臣の活用を近衛内閣から引き継いで考えており、その流れは鈴木貫太郎内閣まで受け継がれます。しかし東條内閣の下で、「無任所大臣を活用するのは無理だろう。別のことを考えるべ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(3)健康産業イニシアティブ実装に向けて
使えるデータで「健康のプラットフォーム」を実現しよう
小宮山宏
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(4)エンタメで一番重要なのは「人」
変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人
水野道訓
徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直
正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
教養としての世界史とローマ史~ローマ史講座・講演編(1)古典と世界史
教養の基礎となるのは、古典と世界史である
本村凌二