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ガンジーに影響を与えたインドの古典『マハーバーラタ』とは

インド神話の基本を知る(1)インドの特性と神話の成り立ち

鎌田東二
京都大学名誉教授
概要・テキスト
インド神話とはどのようなものだろうか。内容を知る前に、まずはインドという地理的場所、歴史の特殊性を押さえておこう。また、最も古い記録である『リグ・ヴェーダ』から派生した叙事詩『マハーバーラタ』内にある「バガヴァッド・ギーター」は、インド独立の父・ガンジーの座右の書となったという点も解説する。(全4話中1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
≪全文≫

●インド神話を学ぶ前にまず知っておくべきこと


―― 皆さま、こんにちは。

鎌田 こんにちは。

―― 本日は鎌田東二先生に、インド神話についてのお話をいただきます。鎌田先生、どうぞよろしくお願いいたします。

鎌田 よろしくお願いします。

―― インド神話というと、最初にわれわれが知っておくべきはどのようなことでしょうか。

鎌田 まず(インドは)広大であるということと、人口がすごく多いということです。そして「インド亜大陸」と呼ばれる、東と西をつなぐような特殊な場所にあって、ギリシア・ローマの世界ともつながり、そして中国ともつながっていく。日本は仏教でものすごく影響を受けています。そのようなものとしてインドが持っている、インド・ヨーロッパ語族といわれるものも含めて、インドの歴史、空間、地理は、世界に非常に大きな影響を与えています。

―― 例えばアレクサンダー大王が攻めてくるなど、今おっしゃったような…。

鎌田 東西の(交流の)十字路のようなところですね。

 そして、宗教もバラモン教、それが統合されて民間信仰とつながって、ヒンドゥー教、ジャイナ教、仏教、イスラーム、そして近代になるとキリスト教が入ってきますから、非常に混淆したものを持っている。言語も、日本のように日本語、アイヌ語など少数のもので成り立っている国とは違って、たくさんの言語を持っているわけです。

 そして、種族、民族、部族もそれぞれの多様性を持っていて、長大な歴史(文明的には5000年、あるいはもっと遡ると1万年という歴史)を持っている。それが一定程度、きちんと記録に残っていることも非常に重要です。その記録の最も古いものが『リグ・ヴェーダ』という、今から3000年ほど前のものだとされています。『リグ・ヴェーダ』とは、神々の讃歌集です。

―― 「神々を讃える歌」ということですね。

鎌田 そうです。『ヴェーダ』には『リグ・ヴェーダ』『サーマ・ヴェーダ』『ヤジュル・ヴェーダ』『アタルヴァ・ヴェーダ』の4つあり、最後の『アタルヴァ・ヴェーダ』は呪文のようなものです。その神々の讃歌の中で、最初の『リグ・ヴェーダ』という讃歌集の中に、神話的な部分が断片的に述べられている。

 それをベースにして、やがて『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』など、いろいろな物語ができてい...
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