聖徳太子「十七条憲法」を読む
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律令国家への道…皆「凡夫」だから人の意見を聞き調和せよ
聖徳太子「十七条憲法」を読む(2)十七条憲法の特徴と聖徳太子の先進性
哲学と生き方
賴住光子(東京大学名誉教授/駒澤大学仏教学部 教授)
十七条憲法の特徴は、日本の新たな国づくり、その秩序・維持のため、君(天皇)と民(人民)とを結ぶ「官人(役人)」に対する心構えを説いたところである。日本が氏族社会から律令社会に移行し、当時の東アジアの国々と伍するにあたり、官の役割は非常に重要になった。その重要な局面で学ぶべきこととして、聖徳太子は十七条憲法に外来の仏教、儒教、法家の思想を盛り込んでいったのだ。そこで聖徳太子は、「議論」と「自分の意見に固執しないこと」の大切さを説く。なぜなら、われらは皆「凡夫」だからだ。(全6話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分07秒
収録日:2023年8月24日
追加日:2023年12月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●「官人」に対する心構えを説いた十七条憲法


―― それでは、十七条憲法にどういうことが書かれていたのか。細かい条文解説は後ほどいただくとして、まずは概略として教えていただきたいと思います。

賴住 そうですね。まず大きな枠組みとして、三つのグループがあると思います。まず、「君」ということで天皇。この時代は、まだ天皇という呼び名がなかったといわれていますが、後の時代の天皇に当たる方がおられて、その下に官人(かんじん、かんにん)という役人たちがいる。そして一番基礎のところに民(人民)がいる。

 こういう構造をまず考えると、君と民をつないでいく官人(役人)に対する心構えを説いていると考えることができるのではないかと思います。

―― はい。

賴住 それ以前にはそれぞれ豪族がいて、私的に土地や民などを統治している状況だったと思います。その豪族の中でも有力な豪族同士がいろいろ話し合ったりしながら政権を運営しているのが、当時の状況だったと思います。

 そういう氏族制的な社会のあり方から、中央集権的な国家体制に(移行させる)。例えば中国の隋などもそういう体制を整えて、どんどん国力を増してきたので、日本としてもそれに倣って、社会のあり方を大きく変えていこうという基本(構想)がありました。

 では、そういう国の中で、役人は具体的にはどういう役割をするのか、どういう心構えでいなければいけないのかなどを問うている。(十七条憲法は)そういうものではないかと思っています。

―― この後、日本はいわゆる律令制にどう持っていくかということが非常に大きな課題になっていきますが、その端緒的な時代がまさにここにあったというところになりますね。

賴住 そうですね。そのように考えることができると思います。


●日本社会成立のために学ばれた儒教と仏教


―― そのような大きな時代状況、国際状況の中で、では具体的にどのようなことを官人(役人)に説いたのかというところになりますが、ここはどうでしょうか。

賴住 そうですね。まず儒教、仏教、さらに法家というように、その当時は外国からの思想がたくさん入ってきていました。それらを学ぶわけですが、例えば儒教であれば「礼」ですね。「礼」は一言でいうと「秩序」ということですが、秩序を維持していく徳目として「礼...

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