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日本のバイタリティと近代管弦楽の融合…伊福部昭の独創性

伊福部昭で語る日本・西洋・近代(2)東洋が見直され始めた時代

片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家
概要・テキスト
映画「ゴジラ」(1954) ライヴ・シネマ形式全曲集
(和田薫 指揮 日本センチュリー交響楽団 〈アーティスト〉 )
チェレプニン賞で1位を獲得した伊福部昭。彼が作曲した「日本狂詩曲」は、日本の祭りのバイタリティと西洋近代のオーケストラの融合であった。民族音楽ではなく、世界のどこでも交響楽団と譜面があれば、日本の祭りが猛烈な音響で壮大に鳴り響くのだ。そのような伊福部の曲は、日本的なもの、アジア的なものが評価される流れのなかで、一気に演奏頻度が高まっていく。当時の国際社会や戦争の状況も踏まえながら、伊福部昭の音楽の特徴を読み解いていく。(全8話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:44
収録日:2023/09/28
追加日:2023/11/18
カテゴリー:
≪全文≫

●音楽を独学した青年の驚愕のオリジナリティ


片山 聴いていただきましょうか。

―― そうですね。21歳のアマチュアの青年がどんな曲を作ったのか。その曲の2楽章をかけてみましょう。

 (音楽:「日本狂詩曲」挿入)

―― ただいまの演奏は、「譚-伊福部昭 初期管弦楽 伊福部昭の芸術1」、指揮は広上淳一さん、日本フィルハーモニー交響楽団の演奏でした。

 これを21歳の、音楽教育を受けてない青年が作った。北大でオーケストラ曲を作っていたわけですね。

片山 伊福部昭さんは中学校(札幌第二中学校)の頃から仲間内で音楽をやっていました。伊福部さんはもともとヴァイオリンをおやりになっていた。だから、本当は作曲よりもヴァイオリニストになりたい時期もあったと思います。ただこれも、ほとんど独学で学んでいたわけです。

 後に音楽評論家にもなる三浦淳史が、同じ中学の仲間にいた。音楽家になるには作曲が一番根本なのだということになって、作曲を独学で一生懸命勉強し、中学から大学にかけて、ストラヴィンスキーやドビュッシーなど当時手に入る譜面を見ながら(勉強した)。でも、誰かに習うわけではない。札幌ですから、有名な作曲家は当時いないし、音楽学校があるわけでもない。独学で勉強し、先ほど申しましたように「チェレプニン賞に応募してみよう」と思っていきなりオーケストラ曲を書いたら、当時の世界の最先端の作曲家たちに「オリジナリティがある」ということで評価されたのです。


●アジアのバイタリティを巨大な近代的オーケストラで


片山 先ほど申し上げたように、アレクサンドル・チェレプニンはアジアの音楽に新しい未来を見るという考え方でした。この「日本狂詩曲」という曲名からも民族的なものが想像されるし、実際に聴いていただいてもそうだったと思います。第2楽章は「祭」という、ずばり祭り囃子的な、熱狂的なお祭りの感覚で作られているオーケストラ曲です。

 チェレプニンの趣味としても、アジアのバイタリティのようなものが、お上品に、オブラートに包まれているかたちではなく、生で出てくるようなもの、しかもそれが近代的な巨大なシンフォニーオーケストラで表現されている。こういうものをチェレプニンはいちばん見つけたかったわけです。だから(「日本狂詩曲」は)、チェレプニンの趣味そのものだったのです。

 ただの祭り囃子を、その...
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