プラトン『ポリテイア(国家)』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
太陽の比喩、線分の比喩、洞窟の比喩…「善のイデア」とは
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(12)善のイデア、洞窟の比喩
哲学と生き方
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
哲学者=統治者が学ぶべき最大のものは「善のイデア」である。そこに向かうためにプラトンが駆使するのは「太陽の比喩」「線分の比喩」「洞窟の比喩」の3つだ。中でも有名な「洞窟の比喩」は、私たち人間の本性と、そこから脱出するための想像力の重要性を実感させてくれる。(全16話中第12話)
時間:14分24秒
収録日:2022年9月27日
追加日:2023年3月3日
≪全文≫

●全ての根源にある「善のイデア」を求めて


 理想の国家を実現するためには、哲人統治が唯一の、しかも可能な手段であるという提案を受けて、哲学者がどうやって政治に関わるのか、いったい哲学者がどうやってこれを実現するのかということが、もう一歩(踏み込んで)語られていきます。

 「哲学者はイデアを見る者。真理を見る者である」と言われるときに、最終的にそのような哲学者となるために学ばれるべきものは「善のイデア」であるといわれます。

 イデアにはおそらくいろいろな種類があるのでしょう。正義のイデア、美のイデア、勇気のイデアなどが存在するのだと思います。そういった諸々のイデアではなく、さらに究極にある「善い」ということの本質を見なくてはいけない。これが、学ぶべき最大のものといわれる「善のイデア」であり、これをめぐって3つの比喩が語られていきます。これを簡単に見ていきたいと思います。

 「善い」というのは、いったいどういうことなのか。「正しい」ということでも十分にすごいものですが、ソクラテスは「『正しい』ということを本当に言い切るためには、さらに究極の『善い』ということを把握しなくてはいけない」「『善い』ということは、『正しい』とか『美しい』といったことを超えた、より根源的なものなのだ」という見通しを述べます。ソクラテスはこのことを「知っている」とは言いません。「私ももちろんよく分からないのだが、そうだと予感している」という言い方をします。

 「善い」とは、例えば私の体にとって善いのは善い食事や適度の運動などというように、普通は相対的に使われます。しかし、その原理は何なのか。私の体にとって善いとはどういうことか。体が善ければいいのか。生きるとはどういうことなのか。こういうことを突き詰めていくときに、「善い」とは何かということを判断する。これを見極めることが、哲人統治する哲学者の最終目標であり、かつその前提になるわけです。

 そんなに簡単に「『善い』とは、こういうことです。はい、勉強してください」というわけにはいかない。そこでソクラテスは、「自分は予感だけしているけれども、あえて比喩のような形で、『善のイデア』とはこういうものではないか、ということは提示できる」と言います。


●善のイデアに向かうための3つの比喩


 これは何か不思議ですね。知っていないのだけれ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治