プラトン『ソクラテスの弁明』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
プラトンのイデア論は、ソクラテスの問いかけへの答え
プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(5)魂の配慮
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
ソクラテスは、メレトスとの対話を通じて、裁判でも自らの哲学を遂行する。そして、お金でもなく、名誉でもなく、肉体でもなく、魂に配慮せよ、という。「魂を配慮する」とは何かについて、ソクラテス自身は答えを示さなかったが、弟子のプラトンは数十年の探求の末、イデア論にたどりつく。(全6話中第5話)
時間:10分22秒
収録日:2019年1月23日
追加日:2019年5月19日
≪全文≫

●メレトスの矛盾を対話で示すソクラテス


 『ソクラテスの弁明』の続きを見ていきたいのですが、ソクラテスは、まず弁明の最初のところで古くからの告発者に対しての分析をしてしまいました。その後の文はどう理解するのか。簡単ではないのですが、面白いところでは、その次には新しい告発者とやり取りがあります。つまり、メレトスという若い詩人で、実は彼はよく(事情が)分かっておらず、黒幕はアニュトスなのですが、その人を証人として前に出してきて、一問一答式で吟味します。これは裁判としてはかなり珍しい場面だと思うのですが、ソクラテスが通常やっているような議論を、まず展開するという部分が真ん中に来ます。

 そこで、メレトスが訴えている罪状を、どういうことかと吟味するわけですが、キーワードとなるのは「配慮」という単語です。ソクラテスは二つ大きな罪でメレトスに告発されているわけですが、一つは教育です。つまり、教育して若者を堕落させているということです。若者を堕落させているという以上は、若者の正しい教育とは何かをメレトスは知っているはずだ、ないしは、少なくとも普段よく考えているはずだ、ということです。

 ところが、メレトスは非常に矛盾したことを言います。メレトスの考えが正しい、間違っているということ以上に、-まあ、実際に間違っているのですが-、メレトスは普段からきちんとそういうことを考えていないじゃないですか、配慮していないようですよね、とソクラテスは裁判員に向かって示していきます。

 同様に、もう一つの大きな罪は、ソクラテスは神を敬わないという点です。これも実は不思議なところで、ソクラテスは新奇なダイモーン(神霊)を導入すると言っているので、何か新興宗教のような、新しい神様のようなことを言っていると罪状には書いてあるのですが、メレトスはよりインパクトのあることを言います。つまり、ソクラテスは一切神様を信じていない、無神論者であると言い出すのです。

 これ自体が矛盾しているということは、すぐに議論で明らかになってしまうわけですが、矛盾していることが重要なのではなく、ソクラテスが考えるのは、メレトスがこんなに重要な問題提起をして、人の命を危険にさらすような裁判を起こしておきながら、実は神様のことについて普段から何も考えていないじゃないですかということを、人々の前に示すというのがメ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
イスラム教におけるシーア派とスンニ派の違い
イスラム教スンニ派とシーア派の違いとは?
山内昌之
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(1)米を食べる日本人と『分裂病と人類』
日本人の生きづらさの特徴は?~中井久夫著『分裂病と人類』
與那覇潤

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(9)「トランプ大統領」の視点・論点
【テンミニッツで考える】「トランプ大統領」をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(6)日本人の当たり前と山本七平の違和感
日本の異様さ…フィリピンから復員した山本七平が驚いたこと
與那覇潤
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
これから必要な人材と人材教育とは?(1)人手の供給不足とマクロ経済への影響
ごく一部の人手不足が「致命的」になる…Oリング・セオリー
柳川範之
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか(1)総力戦時代の到来
日英同盟の廃棄、総力戦…世界秩序の激変に翻弄された日本
中西輝政
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(3)「現場の熱」こそ多角化の要点
新規事業を成功させるリーダーとは…上意下達はなぜダメか
水野道訓