プラトン『ソクラテスの弁明』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ソクラテスのいう「真実のすべて」とは何か?
プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(3)真実のすべて
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
ソクラテスの裁判は、「真実のすべて」を明らかにするという構造を持つ。ソクラテスはいろいろな人のところに出かけては彼らの無知を明らかにし、それによって人々の憎悪をためてきた。この裁判では、自分が憎まれていることを確認することで、それが真実だったとソクラテスは議論する。(全6話中第3話)
時間:10分18秒
収録日:2019年1月23日
追加日:2019年5月5日
≪全文≫

●現在の告発者ではなく古くからの告発者について述べる


 ソクラテスは弁明を始めました。弁明、つまり自分が不敬神の罪には当たらないということを、ソクラテスは限られた時間の中で喋っていかなくてはいけません。ところが、非常に不思議なことが起こります。

 一つ目の不思議なことは、シリーズの冒頭にもありましたが、真実ということをソクラテスが強調する点です。ソクラテスは始めのほうでこのように言います。

「さて、この人たちは、今言ったように、真実はほとんどなにも語りませんでしたが、あなた方は、私から真実のすべてを聞くことになります。」

 「真実のすべて」とは何でしょうか。真実というのは、例えば「これこれは真実で、これこれは違う」ということですが、ソクラテスが言うのは、全部が真実、あるいは真実の全体像というものです。このような言い方自体、やや大げさに言っているのか、あるいは普通の意味での真実と違うのでしょうか。

 そして、実際の真実とは何かを明かすソクラテスの弁明の仕方がとても変わっています。それは、現在この裁判で私ソクラテスを訴えている人たちに対して答えるのは後でも構わない、むしろもっと重要な問題がある、それは古くからの告発者である、という弁明をソクラテスが始めるということです。この裁判と全く関係ありません。何十年も昔から、名前も知れない人たちが自分を告発してきた。それに対して、弁明するのです。普通の裁判ではあり得ない、脱線のようなことが前半部で起こります。ただ、ソクラテスがそこで考える真実が込められています。

 ソクラテスはなぜ訴えられたのでしょうか。それは、自分に「知者」(知識人)という名前が与えられたからです。いかがわしい知者がいて、神を敬わない行動を取って、若者を堕落させているという嫌疑がある。ソクラテスはそれに対して、ある意味ではあっさりと、自分は人々が言っているような者ではない、とまず退けます。自分は自然科学を探求するような自然学者ではないし、若者たちを教育するソフィストでもない。これは皆さん、ご存じですよね、と言います。

 そうすると、ではソクラテスはなぜ裁判に至るような嫌疑をかけられているのでしょうか。そこが、真実というものの一番根っこにある部分だというのがソクラテスの語りの核心にあることです。


●アポロン神託事件は、プラトンの創作?

...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
インド神話の基本を知る(1)インドの特性と神話の成り立ち
インド神話…『リグ・ヴェーダ』『マハーバーラタ』の壮絶な物語
鎌田東二
「学びたい」心のための環境づくり
人間だけが大人になっても「学び」を持続できる
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(34)『オデュッセイア』の秘密と愉しみ
【10min解説】大ヒット映画『オデュッセイア』がもっと楽しくなる神話講義
テンミニッツ・アカデミー編集部
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(2)高齢者総合機能評価とフレイル
“マッチョな老衰”はいない!?若い頃からいかに骨格筋肉量を蓄えるかが健康長寿の鍵
小川純人
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
ギリシア悲劇への誘い(3)悲劇をめぐる哲学論争
プラトン対アリストテレス、模倣の是非をめぐる悲劇論争
納富信留
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(6)漢字と理性と想像力
漢字と理性と想像力…いま日本人が考えるべきこととは?
橋爪大三郎
健診結果から考える健康管理・新5カ条(3)自覚症状ではなくデータを重視せよ
具合が悪くなってから病院に行こうと思ってはいけない
野口緑
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(1)ビジネスのヒントは歴史にあり
『失敗の本質』、中国古典…ビジネスのヒントを歴史に学ぶ
三谷宏治
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
クラシック音楽の歴史をピアノ演奏で辿る~ヴィヴァルディ四季
野本由紀夫