●中国から禅をもたらした道元と栄西
―― 今回の「日本仏教の名僧・名著」は、道元ということになります。道元の生涯は1200年から1253年ということですから、これまで見てきた明恵や親鸞より少し後の時代になります。
道元というと、まさに禅の世界ということになりますが、日本仏教の位置づけとしては、どういうことになるでしょうか。
賴住 道元の場合、禅を中国からもたらした方ということになります。同じ時代に栄西(ようさい、えいさい)という方がおられ、やはり中国で禅を勉強して、それを日本に広めたことで知られています。
一般的に道元は曹洞宗、栄西は臨済宗といわれますが、禅としてかなり違っているところがあります。栄西の場合は、もちろん禅にも非常に打ち込みますが、同じぐらい密教も熱心に修行しました。特に雨乞いの儀礼などが非常にうまかったと伝えられています。
―― 雨乞いですか。
賴住 はい。栄西が雨乞いの祈祷をすると、それまで雨が降らないで困っていたところに急に雨が降ったというような逸話も残っています。
―― 一般の人が思う禅のイメージとは少し違いますね。
頼住 そうですね。そういう意味では、どちらかというと総合的な部分があります。道元の場合は、よく「純禅」といわれるように純粋な禅で、密教などの要素をいっさい入れません。まさに禅に徹したところに道元の大きな特徴があるかと思います。
●禅のはじまりは以心伝心の「拈華微笑」から
―― 法然や親鸞の浄土宗のもととなる浄土教も、もとはインド、中国から日本へ来たという流れでご説明いただきました。禅についても当然インド、中国、日本と来たのだろうと思いますが、そのあたりの位置づけとしては、どういうことになるのでしょうか。
賴住 禅宗の中でいわれている位置づけとしては、今おっしゃっていただいたように、釈迦(釈尊)にまでさかのぼると考えられています。釈尊が禅宗の最初の祖師である摩訶迦葉(まかかしょう)という人に、以心伝心で教えを伝えたといわれています。
道元もその事実を非常に重視していて、何度も繰り返し『正法眼蔵』の中に書いています。大変面白いエピソードなので、ご紹介したいと思います。
あるとき、釈迦が説法をするということで、お弟...