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禅の原点とは――中国から禅をもたらした道元の生涯に迫る

【入門】日本仏教の名僧・名著~道元編(1)道元の生涯と禅の歴史

賴住光子
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部倫理学研究室教授
情報・テキスト
道元
出典:Wikimedia Commons
禅を中国からもたらした僧に道元と栄西がいる。密教も熱心に修行した栄西とは異なり、道元は禅に徹したところに大きな特徴がある。禅宗は、末法思想が中心をなす浄土教とは対照的に、この世で修行して悟りを開くことを目指している。その強い決意、厳しい態度は鎌倉武士に受容され、室町文化にも強い影響を与えている。(全4話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:15:45
収録日:2020/09/30
追加日:2022/06/25
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≪全文≫

●中国から禅をもたらした道元と栄西


―― 今回の「日本仏教の名僧・名著」は、道元ということになります。道元の生涯は1200年から1253年ということですから、これまで見てきた明恵や親鸞より少し後の時代になります。

 道元というと、まさに禅の世界ということになりますが、日本仏教の位置づけとしては、どういうことになるでしょうか。

賴住  道元の場合、禅を中国からもたらした方ということになります。同じ時代に栄西(ようさい、えいさい)という方がおられ、やはり中国で禅を勉強して、それを日本に広めたことで知られています。

 一般的に道元は曹洞宗、栄西は臨済宗といわれますが、禅としてかなり違っているところがあります。栄西の場合は、もちろん禅にも非常に打ち込みますが、同じぐらい密教も熱心に修行しました。特に雨乞いの儀礼などが非常にうまかったと伝えられています。

―― 雨乞いですか。

賴住 はい。栄西が雨乞いの祈祷をすると、それまで雨が降らないで困っていたところに急に雨が降ったというような逸話も残っています。

―― 一般の人が思う禅のイメージとは少し違いますね。

頼住 そうですね。そういう意味では、どちらかというと総合的な部分があります。道元の場合は、よく「純禅」といわれるように純粋な禅で、密教などの要素をいっさい入れません。まさに禅に徹したところに道元の大きな特徴があるかと思います。


●禅のはじまりは以心伝心の「拈華微笑」から


―― 法然や親鸞の浄土宗のもととなる浄土教も、もとはインド、中国から日本へ来たという流れでご説明いただきました。禅についても当然インド、中国、日本と来たのだろうと思いますが、そのあたりの位置づけとしては、どういうことになるのでしょうか。

賴住 禅宗の中でいわれている位置づけとしては、今おっしゃっていただいたように、釈迦(釈尊)にまでさかのぼると考えられています。釈尊が禅宗の最初の祖師である摩訶迦葉(まかかしょう)という人に、以心伝心で教えを伝えたといわれています。

 道元もその事実を非常に重視していて、何度も繰り返し『正法眼蔵』の中に書いています。大変面白いエピソードなので、ご紹介したいと思います。

 あるとき、釈迦が説法をするということで、お弟子さんたちがたくさん集まってきました。釈尊は何も言わないで、ただ花を摘まんで、みんなに見せました(拈華、ねんげ)。。お弟子さんたちは驚いてしまって茫然としていたのですが、摩訶迦葉だけがその意味が分かりました。「破顔微笑(はがんみしょう)」といいますが、微笑んで分かりましたよ、ということを釈尊にお伝えしたのです。すると釈尊が、「私に正法眼蔵涅槃妙心がある(自分は真理を体得している)が、それを自分の意図を分かってくれた摩訶迦葉に伝える」と言いました。そのようなエピソードが、伝説ではありますが伝えられています。

 真理というのはある意味言葉を超えているから、言葉で説法するのではなく、花にそれを託した。摩訶迦葉はその意味が分かって微笑した。そこで教えが以心伝心、言葉ではなく伝わったというのが、禅宗の原点だといいます。

 摩訶迦葉を初代として、その後代々禅の教えが伝わり、28代目が達磨大師(だるまだいし)です。その達磨がインドから中国にやってきて伝えた教えが、代々中国に伝えられました。そして、道元が中国で伝わっている禅を日本にもたらしたという歴史が語られています。

 禅の歴史の中ではずっとそう伝えられてきましたが、近代になって本当にそうなのかを文献的に検証したところ、禅宗は中国でできた教えではあるが、ただそういうと若干権威が下がってしまうので、釈尊までさかのぼって教えが伝わってきたといっています。しかし、実質的には中国でできた教えだといわれています。

賴住 ただ、釈尊はまさに坐禅瞑想をして悟りを開いたわけですから、釈尊と直接につながっているということも、あながち外れているわけではありません。しかし、宗派の歴史としては中国から始まったということになります。


●浄土教とは対照的に、この世で修行して悟りを開くことを目指した禅宗


―― 禅は中国で出来上ったということでしたが、中国には浄土教の流れもあったかと思います。これらの違いはどういうことになるのでしょうか。

頼住 浄土教の場合には、末法思想が一番の芯になってくると思います。この世では修行することも悟りを開くこともできないから、死んで浄土に行ってそれをしましょうということです。しかし、禅の場合には、まさにこの世で修行して悟りを開くことを目指しています。その点では、かなり対照的な教えになってくると思います。

―― という...
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