万葉集の秘密~日本文化と中国文化
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本の歌を大切にしよう…中華文明の影響と脚下照顧の教え
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(3)グローバル・スタンダードと脚下照顧
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授(特別専任)/奈良大学 名誉教授)
『万葉集』は中華文明の影響を受けている。実際、当時の日本はグローバル・スタンダードである中華文明の知識を得、阿倍仲麻呂をはじめとした知識人たちを排出したのだ。しかし、このままではいつまでたっても自分たちの言葉で自分たちの気持ちを表現することができない。ということで、脚下照顧、すなわち足下を見つめる中、日本の歌を大切にしよう、自分たちの文化を大切にしよう、という機運が生まれ、『万葉集』の誕生へとつながっていったのである。(全5話中3話)
時間:14分18秒
収録日:2022年9月13日
追加日:2023年3月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●中華文明の4つの要素


 では、中華文明とはいったい何か。これは、4つの要素があります。

 1つは当然、漢字です。漢字を理解することによって、(2つ目の)律令という法体系を学ぶことができ、この法体系に基づいた官僚組織をつくることができます。だから律令は極めて重要です。

 3つ目は儒教です。儒教とは、広くいえば人間関係ということになります。現在でも、国際社会において守らなければならないルールがあります。例えば、「基本的人権の尊重が守られない国とはお付き合いすることができません。きちんと基本的人権を守ってください」ということは、互いに国際社会の中で確認するところですね。それと同じで、儒教の考え方を学んでくれないと外交もできませんよ、ということになります。だから、儒教もきわめて重要になります。

 もう1つが仏教です。仏教は東アジア全体に広まった最も有力な宗教になります。

 したがって、漢字、律令、儒教、仏教の4つの共通項を持った社会ができてきていると理解をすればいいと思います。


●中国に引けをとらなかった日本の知識人たち


 日本の国の教育体制も、この4つを学ぶように整えていきます。

 漢字を学ぶために、百済の国から王仁(わに)博士を連れてきて、そして勉強をする。また国に学校をつくっていくことになります。律令の専門家も招くことになり、日本的な律令が7世紀の後半にはできて、天皇といえども律令という法律制度の上に位置づける存在です、ということがきちんとうたわれる法治国家ができます。

 さらには各地域に仏教が根づくように、国分寺、国分尼寺をつくるだけでなく、各豪族たちも地域でお寺をつくり、そこで仏教を学ぶという仕組みが出来上がってきます。

 すると、日本において、水準は違ったとしても、グローバル・スタンダードな教育が一応、できるわけです。そうすると、日本で学んだ人たちが中国に行っても、その学識が通用するということが起きます。

 その一番の例は誰かというと、阿倍仲麻呂です。阿倍仲麻呂は遣唐留学生として中国に渡り、玄宗皇帝に仕えて、玄宗皇帝の子どもの教育係をさせられています。そして、さまざまなことを行うのですが、秘書庁の長官をする。簡単にどういう役割かというと、秘書というと事務方と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。図書館館長でもあり、皇帝の秘書...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1
ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?
渡部泰明
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫

人気の講義ランキングTOP10
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
宗教で読み解く世界(1)キリスト教の世界
キリスト教とは?…他の一神教との違いは神様と法律の関係
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(2)世界市民と国家連合
「コスモポリタニズム」の理想と「国家連合」というプラン
川出良枝
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純