万葉集の秘密~日本文化と中国文化
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
日本的+中国的…両面あわせ持つ歌集が『万葉集』
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(2)『万葉集』という歌集のあり方
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授(特別専任)/奈良大学 名誉教授)
日本の古代文化である『万葉集』にはいろいろな漢語、漢詩が登場する。大伴旅人の「酒をほめる歌」や山上憶良の長文などがそうだが、これは『万葉集』の中に中国文化が色濃くあるということを示している。しかし、それだけではない。日本的な側面もあると上野氏は言う。そこがこの歌集のあり方なのだ。(全5話中2話)
時間:11分21秒
収録日:2022年9月13日
追加日:2023年3月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●『万葉集』には多くの漢語が登場する


 今、私たちは『万葉集』を「まんようしゅう」と読んでいます。平安時代の人が「まんようしゅう」と読んでいたかどうかは、『古今和歌集』の仮名で書かれた序文に「まんえふしふ」と出てきますので、「まんようしゅう」と読まれていたことはたしかです。けれども、奈良時代の人が本当にそう読んだかどうかは分かりません。もしかすると、漢字通りに「ばんようしゅう」と読んでいた可能性もありますし、「よろづよのしゅう」と書き下しで読んでいた可能性もあります。

 『万葉集』というものは日本の古代文化であり、日本の古代文化は日本文化全体の基(もとい)、礎石、基礎といったものにつながりますので、『万葉集』を通じて日本文化全体を考えていくことができるわけです。

 例えば今、「やたらと日本語の中に外来語が入ってきて、けしからん」と言う人がいますね。私も、その1人です。やはり「インフォームドコンセント」と言うならば、「納得いくまで相談をする医療」などという具合に置き換えていくべきだと思います。決して外国語を排除する必要はないのだけれども、置き換えて説明していく必要がある。外国語が独り歩きしないようにすべきだと思うのです。

 実は、『万葉集』もそうなのです。例えば、私たちは「春が来た」と言います。「春が来た 春が来た どこに来た」と言いますよね。ところが、『万葉集』には、春がやってくるという表現は、「春さり来る」という言い方をすることもあるのですが、「春が立つ」と出てくるのです。「春が立つ」と言ったら、漢語「立春」を大和言葉に翻訳したもので、誰も「春が立ったなあ」とは言わないのに、歌の中では「春が立つ」と言っている。

 例えば、私たちは「風が吹く」とは言います。「風が強い」も言いますよね。「風が寒い」も言いますね。ところが、『万葉集』を読んでいると、「風高し」と出てくるのです。上空で風が吹いているということではなく、「風高し」のおそらく言わんとするところは、「風が強い」ということだと思います。それを「風高し」と言っているわけです。これも翻訳なのです。


●『万葉集』は中国的でもあるが、日本的である


 さらに、『万葉集』巻3の、大伴旅人の「酒をほめる歌」は、そのまま読んでも絶対に分かりません。なぜ分からないかというと、この酒をほめる歌(お酒にどういう...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿(1)政治家・石原慎太郎の源流と核の問題
都知事、非核三原則…1970年・30代の慎太郎が書いていたこと
片山杜秀
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(1)シェイクスピアの謎
シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?
河合祥一郎
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
印象派の解体と最後の印象派展(1)セザンヌと印象派
印象派の画家に大きな影響を与えたセザンヌの構築的筆触
安井裕雄
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆

人気の講義ランキングTOP10
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(2)戦略リーダーシップの8次元分析
総合評価は?トランプ大統領の戦略リーダーシップ徹底分析
東秀敏
ユダヤ神話の基本を知る
ユダヤ教の神話…天地創造、モーセの十戒、死後の世界
鎌田東二
編集部ラジオ2026(9)「トランプ大統領」の視点・論点
【10minで考える】「トランプ大統領」をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(1)米を食べる日本人と『分裂病と人類』
日本人の生きづらさの特徴は?~中井久夫著『分裂病と人類』
與那覇潤
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
新撰組と幕末日本の「真実」(序)『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の魅力と史実の絶妙さ
新撰組と『ちるらん 新撰組鎮魂歌』…群像劇としての魅力の源泉に迫る!
堀口茉純
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄
民主主義の本質(3)宗教と教会と民主主義
宗教と民主主義…カトリック、正教会、イスラム教の違いは
橋爪大三郎