【入門】日本仏教の名僧・名著~道元編
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「布施」の本当の意味とは?禅が説く自他一如の世界
【入門】日本仏教の名僧・名著~道元編(4)「菩提薩埵 四摂法」と自他一如
賴住光子(東京大学名誉教授/駒澤大学仏教学部 教授)
『正法眼蔵』の「菩提薩埵 四摂法」を読み解く最終話。理解の手がかりは「自他一如」である。自他のあいだに隔たりがなければ、モノに所有という概念はなく、必要なときに必要な人がそれを使えばいいことになる。それゆえ仏教上の「布施」は、何かの対価でもなければ、一方から他方への所有権の移動でもないのだ。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分46秒
収録日:2020年9月30日
追加日:2022年7月16日
カテゴリー:
≪全文≫

●「自他一如」のもとで考える「同時」ということ


―― これは『正法眼蔵』の「菩提薩埵 四摂法」の中に、実際に道元がお書きになったものですね。

賴住 そうです。

―― では、さっそく読んでまいりたいと思います。

「同事といふは、不違なり。自にも不違なり、他にも不違なり。(中略)同事を知る時、自他一如なり。」

 前回お話しいただいた「自他一如」という言葉が早速出てくるわけですね。

賴住 そうです。まず「同事」ですが、分け隔てなく「こと」をともにするということです。「不違」は違わない、すなわち一緒ということで、「同」を「不違」と言い換えています。大切なのは「自他一如」で、これが道元のこの四摂法を考えるうえでポイントとなる言葉だろうと思います。

 自分と他人は、別々のものではない。自分がいて、他人がいて、それぞれ別々の要素として確固として変わらないものとしてあると考えるのではなく、自分と他人は密接に関わった一体のものであって、自分が変われば他人も変わるし、他人が変われば自分も変わる。そういう意味で一体であるということ。それをベースにして、一緒に物事をやっていくということがあることになるかと思います。


●自他の区別をやめて、執着から離れる


―― なるほど。では、先を読んでまいりたいと思います。

「愚人おもはくは、利他をさきとせば、自が利、はぶかれぬべしと。しかにはあらざるなり。利行は一法なり、あまねく自他を利するなり。」

賴住 そうですね。これは、愚かな人は他人を利すれば自分の利益が低下してしまうと思うかもしれない、と。

―― 例えば、自分のお金をあげると、あげた分、損をするということですね。

賴住 そうですね。でも、「自他一如」という考え方によれば、他人に何かいいことがあれば自分もよくなるということになってくるのです。

 自分というものが確固としていて、他人というものが別の確固たるものとしてあるとすれば、自分が何かを所有している場合、それを人にあげれば、自分のものがなくなり損をする、ということになります。そういう考え方ではなく、自分と他人は結びつき合っていて、そのあいだにものがある。それを必要な人が使う。今は自分のところにあったとしても、あの人が必要であれば、それはその人のところに移動すればいい。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫