孫子と統帥綱領でウクライナ侵略を読む
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緒戦に全力を投入せよ…統帥綱領と孫子から学ぶべき教訓
孫子と統帥綱領でウクライナ侵略を読む(3)緒戦の重要性
政治と経済
「統帥綱領」を読み解きながら戦争遂行における要諦を見ていく。ここでは戦争において、何より緒戦が重要だと書かれており、実は『孫子』でも同様のことが説かれている。そして「統帥綱領」と『孫子』の内容を読み解いていくと、今回の戦争におけるロシアの見通しの甘さが見えてくる。(全4話中3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:10分50秒
収録日:2022年4月27日
追加日:2022年6月12日
≪全文≫

●長期戦を避けなければならない――「統帥綱領」に学ぶ教訓


田口 今度は「統帥綱領」のほうへ移りましょう。

 「統帥綱領」の第一は「統帥の要義」として、「現代の戦争は、ややもすれば、国力の全幅を傾倒して、なおかつ勝敗を決し能わざるにいたる」とあります。つまり、現代の戦争はどうしても長期戦になってしまう。したがって、長期戦を避けなければならないということを、まず現代の戦争では考えなければいけないというのです。

 「故に、我が国はその国情に鑑み、勉めて初動の威力を強大にし」とありますが、今は「初動にどの程度の威力ある計画・備えがあるのですか」と聞いても、区分がありません。「長期戦になったときはどうするのか。初動はどうするのか」といった区分もなく、何に対する計画なのかがよく分からないことになっている。この点が非常に問題だということです。

 そして「速やかに戦争の目的を貫徹すること特に緊要なり」。本当にこれは重要です。

 次の「政戦」とは、政治と戦争のことです。政治と戦争では、ともに戦略を持たなければならない(両略)。「これは戦争で行ってください。これは政治で行います」などと言ってはいけない。要するに、政治の中には両方に関係する情報が入っています。そうした立体的な戦略を立てなければいけないということを、ここでは述べているのです。

 そこで孫子は何と言っているのかというと、「其の戰を用ふるや、勝つも久しければ(戦いが長引けば長引くほど)、則ち兵を鈍らし鋭を挫く」。軍隊の兵隊というものは、いつも死の危険にさらされているので、ある意味では緊張の極地にいます。飛行機が飛んできてバーンと撃たれれば、それで自分の人生は終わりであることを皆が感じている。だから、一見ただボーっとしている様子だけど、頻繁にどこか後ろから飛行機が飛んでくる、敵機が飛んでくるのではないかと思っている。だから常に緊張していてくれと言われるわけです。だから戦いが長引くと、「則ち兵を鈍らし鋭を挫く(兵を疲弊させ鋭気を挫くことになる)」。

 そして「城を攻むれば」とは、首都陥落です。それが最も「力屈す」。「久しく師を暴せば、則ち國用足らず(長く軍を露営させれば、予算が不足してしまう)」。

 先ほどの話に戻ると結局、ロシア...

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