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ウクライナ侵攻からトップが学ぶべき『孫子』の教え

孫子と統帥綱領でウクライナ侵略を読む(1)孫子の兵法と「info war」

概要・テキスト
中国春秋戦国時代で生まれ、今なお多くの人に読まれ続ける兵法書『孫子』。また、大日本帝国陸軍が作戦を立案するために策定した手引書である『統帥綱領』。これらは、現在のロシア・ウクライナ間の戦争を見る際にも、多くの視座を与えてくれる。まずは『孫子』を見ながら、ロシアの現状、さらに日本の抱えるリスクについて解説する。(全4話中1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:14:12
収録日:2022/04/27
追加日:2022/05/29
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≪全文≫

●プーチンは『孫子』の重要事項を軽視している!?


田口 『孫子』と『統帥綱領』(※)の二つを用いて、注意しなければいけない点を今日は話そうと思います(※編注:『統帥綱領』はかつて日本陸軍が策定した作戦指導書。大正3〈1914〉年に作成され、大正7〈1918〉年に第1次改訂が、昭和3〈1928〉年に第2次改訂が行われた)。

―― ありがとうございます。

田口 『孫子』は、この言葉から始まります。

「兵は國の大事にして、死生の地、存亡の道なり」

 これを、何気なく書いてあるように読んでしまう人がいます。私は、何気なく読んでしまうのは戦争と遠いポジションにいる人で、要するにその戦争と関係ないから「俺(私)には関係ない」と思ってスーッと通り過ぎてしまうのかと思ってしました。けれども今回、ロシアのウクライナ侵攻を見て、やはり戦争当事国でも、この箇所をきちんと身に染みて読んだトップリーダーと、読んでいないトップリーダーがいるということが、よく分かりました。

 プーチンという人は、あまりにも戦争に慣れているのか、あるいは麻痺しているのか、この『孫子』の冒頭の一文でズバッと書いてある注意項目を軽視してしまいましたね。

―― なるほど。

田口 ここが今、彼がものすごく悩んでいる最大のポイントです。兵(戦争)は国の大事で、簡単にいえば人間は「死ぬか、生きるか」、国は「存続するか、滅亡するか」で、戦争はその分岐点になるのだから、ボクシングの試合ではあるまいし、「さあ、やってやろう」というように簡単に始めてはならず、念には念を入れるようにしなければいけない。

 その次の「察せざる可からず」とあるのが何かということを、よく理解しなければいけません。「察」という字は、家の中に祭りがあるという形をしています。この1字だけで3時間ほど軽く語れるほど深い言葉なのですが、簡単にいえば、「祭」という字の上半分は、神に肉を手で差し上げている(捧物している)様子を表し、下半分の「示」は神棚(神の存在)を表わしている。だから、神さまに当時とても欠くべからざるものであった肉を「どうぞお納めします」と言って差し上げている、という字なのです。

 よく「神に誓って」という言い方をしますね。「本当にこう思ってよ」「とても一大事なのだよ」「それほど簡単に始めてはいけないのだよ」という...
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