百姓からみた戦国大名~国家の本質
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
国中諸郡退転という危機…北条氏康の天文19年の政治改革
百姓からみた戦国大名~国家の本質(6)統一的な税制改革
黒田基樹(駿河台大学法学部教授/日本史学博士)
村の安定的な存続のために、戦国大名は領国内で一律の制度をつくることを試みた。北条家の事例では、天文19年、北条氏康の政治改革によってそれが達成される。このきっかけとなったのは、地震災害によって生活費の工面ができなくなった百姓を統一的に救済する策の実施であった。(全8話中第6話)
時間:11分23秒
収録日:2019年3月20日
追加日:2019年10月20日
≪全文≫

●一律の制度形成というさらなる課題


 次なる課題は、領国内で一律の制度をつくり、どう適用させるかということです。

 戦国大名の領国は、例えば北条家の領国の場合、最終段階では伊豆、相模、武蔵、上野、下野、下総、上総の7カ国にわたるほど広大な領国になっていました。その中で、租税徴収の仕組みは統一されていきました。これも、それまでの室町時代ではあり得ないことです。

 それまでは、各地域において支配契約が存在し、租税の納入契約がそれぞれによって結ばれていました。例えば、升の大きさや度量衡なども、場合によっては全て異なっていることが普通でした。それで困らなかったのです。それは、それぞれの荘園について、「年貢は特定の升で何合、何升」といった形で決められる契約だったからです。

 ところが、戦国大名は領国の各村から同じように、大普請や陣夫役を徴収する必要があり、その基準を一律にする必要が生じました。しかし、それもある段階の中でようやくつくり出されたものです。北条家の場合、そのきっかけになったのが、戦国時代が始まってから100年ほどたった天文19(1550)年4月の政治改革です。これにより、一律の基準がつくられました。


●百姓が逃げ出し、村が成り立たない状態に


 この時、北条家の領国は、「国中諸郡退転」と呼ばれる状態でした。国中諸郡とは、領国全域という意味です。退転とは、村々から百姓が逃げ出してしまい、村が百姓不足になっている状態です。村の百姓不足は、作付面積の縮小をもたらします。作付面積が縮小するということは収穫量が減るので、それはそのまま、大名やその家来たちが徴収する年貢が少なくなるということを意味します。「国中諸郡退転」が領国全域で起こっているということは、極めて深刻な事態です。

 どうしてこのような状態になったのか、定かではいないのですが、前年に東国一帯で大地震が発生していますので、おそらくその地震災害が要因だろうと考えられています。

 その国中諸郡退転という危機的状況の中で、この時の北条家当主である3代目の北条氏康は、百姓を帰村させるための対策を取りました。多くの村々で、百姓がどこかに逃げ出してしまっていたのですが、これを元に戻すという対策を取ったのです。


●地震災害によって...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
独裁の世界史~ギリシア編(1)世界史の始まり
「独裁政から始まる」という世界史の諸相に迫る
本村凌二
「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(1)なぜ日本人は突入できたのか?
福島第一原発事故…日本の危機と闘った吉田昌郎と現場の人々
門田隆将
技術と民生から見た明治維新(1)遠藤謹助
遠藤謹助―造幣局をつくった「造幣の父」
山内昌之
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変(1)はじめに
新史料の発見で見直される「本能寺の変」
藤田達生
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(15)昭和の名将・樋口季一郎
【10min解説】ユダヤ人救出、奇跡の撤退…名将・樋口季一郎
テンミニッツ・アカデミー編集部
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
ウェルビーイングを高めるDE&I(2)人と組織を取り巻く環境変化:後編
なぜ日本の幸福度は低すぎるのか?会社任せで失われる自律性
青島未佳
イラン戦争と終末論(1)イラン戦争の戦略的背景と米国の政策
なぜイラン戦争がこのタイミングなのか?戦略的背景に迫る
東秀敏
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国大名と民衆の過酷な課題…飢饉の常態化をどう生き延びるか
黒田基樹
昭和の名将・樋口季一郎…キスカ・占守島編(1)キスカ島撤退作戦
5200人の将兵を救え…米軍も称賛した「キスカ島撤退作戦」の奇跡
門田隆将
昭和の名将・樋口季一郎…ユダヤ人救出編(2)オトポール事件と極東ユダヤ人大会
オトポール事件と極東ユダヤ人大会の真相…失脚覚悟の決断
門田隆将
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
織田信長の「天下」とは…最新研究で激変する人物像・時代像
柴裕之
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
三日坊主、部屋が片付かない…なぜできないか行動分析学で考える
島宗理