百姓からみた戦国大名~国家の本質
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
戦国時代、城郭が恒常的に存在するようになった二つの意味
百姓からみた戦国大名~国家の本質(3)統治権力と城郭の新しい役割
黒田基樹(駿河台大学法学部教授/日本史学博士)
戦国大名の構造として重要なのは、戦争の恒常化に伴い、城を拠点にした領域が形成されたということである。これによって軍事拠点としての城郭が恒常的に存在するようになり、そこに政治拠点としての性格も付与されるようになる。こうした領域権力の確立は、戦国大名が統治下にある全ての村落に対して戦争費用を負担させるようになることも意味した。(全8話中第3話)
時間:8分04秒
収録日:2019年3月20日
追加日:2019年9月29日
≪全文≫

●「領域権力」という新しい統治構造


 次に、戦国時代に新しく生まれてくる統治権力についてお話しします。これは一般に「戦国大名」と呼ばれていますが、この戦国大名とは、それまで日本列島に存在していた政治権力とは全く性格が異なる、新しい性格の権力です。

 これまでの政治権力とは何が一番異なるのでしょうか。関東には北条家という大規模な戦国大名が存在していました。戦国時代が終焉するのが小田原合戦であり、ここにおいて羽柴秀吉が北条家を滅ぼしました。これが基本的には戦国時代最後の合戦とされています。つまり北条家は、戦国時代の最後の段階まで存続していました。

 これは北条家の領国図です。この図では、領国の範囲を太線によって示してあるのですが、一円的な範囲を覆っているということが分かります。それ以外のところは、別の大名の領国なので、この領国の範囲を示している線そのものが、現在でいう国境線に当たります。

 こうした政治権力の在り方は、「領域権力」と呼ばれています。一定領域を排他的に統治する権力のことです。現在のわれわれの国民国家も領域権力を持っています。


●戦国時代、軍事拠点としての城郭が恒常的に存在するようになる


 領域権力はどのような段階を踏んで生まれてくるのでしょうか。まずいえるのは、領域権力は、日本列島においてこの戦国時代になって初めて生まれてきたものだということです。室町時代までの領主は、このような領域権力を持ってはいませんでした。戦国大名による戦国時代になり、戦争の恒常化が進む中で、戦国大名たちの領域権力が誕生しました。

 戦国大名が誕生してくる前提として、戦争の恒常化がありました。領域権力誕生の要因も、実は戦争を遂行するという性格にあります。現在の国民国家も、実は近代社会に展開する中で、戦争のためにつくり出された権力です。そのため、現在の国民国家は領域権力や領域国家としても存在しています。

 その戦争の恒常化に伴い、まず軍事拠点である「城」というものが恒常的に存在するようになります。城も、古代から軍事施設を指してそう呼ばれていたのですが、この城郭が恒常的かつ日常的に存在するようになるのは、戦国時代になってからです。


●軍事拠点である城郭に政治拠点としての性格が付与されるようになった


 なぜ恒常的かつ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏