戦国大名の外交、その舞台裏
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
国盗り合戦のイメージは誤り?戦国時代の戦争の始まりかた
戦国大名の外交、その舞台裏(7)同盟の破棄と開戦:前編
丸島和洋(東京都市大学共通教育部 人文・社会科学系 教授)
一般的に知られるより慎重であった戦国大名の間で、戦争はいかに生じたのか。1つの要因として挙げられるのは国境の小競り合いの拡大である。特に問題となったのは、国境地帯に多く存在する国衆領だ。上杉謙信が永禄3(1560)年から北条領に侵攻した時の状況を取り上げながら解説する。(全8話中第7話)
時間:8分20秒
収録日:2019年6月13日
追加日:2020年2月19日
≪全文≫

●同盟の破棄:手切之一札


 最後に、同盟破棄の作法についてお話したいと思います。事例としては、上杉謙信と北条氏康の同盟に話を戻します。この同盟は、謙信が同盟条件として約束した武田領攻撃をまったく行わなかったことで、最終的に決裂しました。これまでに何度か言いましたように、上杉・武田両大名とも、川中島合戦終結後は、直接対決を避けようとし、和睦交渉を繰り返していました。

 いずれにせよ、上杉・北条同盟はわずか3年で終わってしまいました。その際、北条・上杉両国は「手切之一札」という文書を取り交わしたことが分かっています。「手切」とは同盟破棄を意味するので、「手切之一札」は、同盟破棄の通告書を意味します。戦国大名の戦争というと、極めて暴力的で野蛮なイメージがありますが、同盟を破棄し、戦争を再開する際には、「手切之一札」という文書を送付し合うという暗黙の了解事項があったのです。現在でいえば、宣戦布告状ということになるでしょうか。

 なぜ、このような手順を当時、踏んでいたのでしょうか。これを考えるヒントになるのが、「手切之一札」の写しが、関係者に配られたという事実です。そして「手切之一札」を読むと、自分がなぜ同盟を破棄し、かつての同盟国と戦争を行うのか、自分は同盟を守るために必死にやってきたのに相手がいかにひどいことを行ったため、止むを得ず同盟破棄せざるを得なくなったのだということが、書き連ねてありました。つまり「手切之一札」は、同盟を破棄する相手大名に送ることが本当の目的ではありません。関係する大名や家臣に配付することで、自分が同盟破棄を「せざるを得なかった」として、その正当性をアピールし、味方を増やすことが目的だったのです。

 戦国大名という存在は、われわれが考えている以上に外聞を気にする存在であった、と考えられます。戦国大名というと、天下統一を目指す「国盗り合戦」のイメージがありますが、これは事実とはかけ離れています。まず、日本全国を統一しようなどと考えている大名は、基本的に存在しません。織田信長も当初、主な目的は室町幕府の再興でしたが、足利義昭と戦争になってしまったので、止むを得ず追放したという経緯があります。現在は信長が本当に全国統一を目指していたのかということが研究者の間で議論になっているほどです。たしかに領国拡大のための戦争もあったのは事実ですが、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
戦国大名の外交、その舞台裏(1)戦国大名という地域国家
戦国時代とは何か?意外と知らない戦国大名と国衆の関係
丸島和洋
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
歌舞伎はスゴイ(1)市川團十郎の何がスゴイか(前編)
市川團十郎の歴史…圧倒的才能の初代から六代目までの奮闘
堀口茉純
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
戦国合戦の真実(1)兵の動員はこうして行なわれた
戦国時代の兵の動員とは?…無視できない農民の事情
中村彰彦

人気の講義ランキングTOP10
独裁の世界史~未来への提言編(1)国家の三つの要素
未来を洞察するために「独裁・共和政・民主政」の循環を学べ
本村凌二
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIは間違いが分からない…思考で大事なのは訂正可能性
中島隆博
歌舞伎はスゴイ(4)歌舞伎のサバイバル術(後編)
江戸時代の歌舞伎にも大波乱が…どうやって生き残ったか
堀口茉純
「進化」への誤解…本当は何か?(6)木村資生の中立説
欧州では不人気…木村資生の中立説とダーウィンとの違い
長谷川眞理子
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
株価と歴史…トランプ関税の影響を読む(2)株価リターンの歴史から考える
株式リターンの歴史検証…大きな構造変化の影響を見抜く
養田功一郎
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝