戦国大名の外交、その舞台裏
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「起請文」とは高度な外交交渉の成果である
戦国大名の外交、その舞台裏(4)同盟の条件
丸島和洋(東京都市大学共通教育部 人文・社会科学系 教授)
実際に大名間で同盟を成立させるためには「起請文」と呼ばれる誓約書を交換する必要がある。この文書は外交文書と同様、相手方と文案を調整しながら、合意を成立させていくものである。その際に最も困難な交渉が領土協定であった。(全8話中第4話)
時間:14分06秒
収録日:2019年6月13日
追加日:2020年1月28日
≪全文≫

●同盟の維持の成立過程


 今回は、同盟の成立過程を掘り下げて再検討したいと思います。戦国大名同士の同盟には、いくつかの協議事項があります。大まかにいうと、軍事協力の合意、婚姻関係の構築、そして国境の確定です。


●神々に誓約し、起請文を交換する


 これらの協議事項は、前に触れた「起請文」という神々に誓約する形式の文書を交換することで成立します。日本にいる沢山の神々の名前を並べ、ここで取り決めた約束を破ることはしない、もし破ったら、神罰を受ける、ということを記した文書です。

 起請文というのは特殊な文書で、熊野那智大社をはじめとする神社が発行する「牛玉宝印」という護符、つまり御守りの裏側に書くことが、戦国時代に一般化します。

 この起請文には、血判を据えることもあります。しかし、よく誤解されるのですが、指に傷をつけて拇印を捺すものではありません。前近代の血判というのは、実際には針で指に穴を空け、花押というサインの上に血をしたたらせます。そのため、残念ながら血判から戦国大名の指紋が分かるということはありません。


●外交文書と同様に、文案を詰めていく


 興味深いことに、起請文は大名が一方的に文面を決めるのではありません。相互に下書きを送付し合って、文案を詰めていきながら、最終的に合意した事項が起請文に記されます。つまり起請文とは、高度な外交交渉の成果なのです。また、起請文の最後に記す神々には、双方が信仰する神の名前が付け加えられます。これにより、誓約内容の確実性を高めたのです。


●何度も交換することで同盟継続を確認


 もう1つよく誤解されることですが、起請文は和睦・同盟の成立時にのみ交換されるわけではありません。というのも、戦国時代の和睦・同盟には、有効期間というものがありません。つまり、いつまで同盟を結ぶ、ということを定めるわけではないのです。だからといってずっと同盟を結ぶことにはなりません。むしろ実態は逆で、情勢の変化によって、容易に同盟は破棄される危険性を持ちます。そこで各戦国大名は、頻繁に起請文を交換し合い、同盟関係が現在も維持されていることを確認し合いました。特に重要なのは大名の代替わりで、ここでは必ず起請文を交換し直して、同盟継続を確認することが不可欠です。

 同盟にはしばしば娘の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
ソフトな歴史学のすすめ(1)グローバル・ヒストリーと民俗学
グローバル・ヒストリーの中で日本の歴史を俯瞰する意味
上野誠
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
新撰組と幕末日本の「真実」(序)『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の魅力と史実の絶妙さ
新撰組と『ちるらん 新撰組鎮魂歌』…群像劇としての魅力の源泉に迫る!
堀口茉純
「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(1)なぜ日本人は突入できたのか?
福島第一原発事故…日本の危機と闘った吉田昌郎と現場の人々
門田隆将

人気の講義ランキングTOP10
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
編集部ラジオ2026(14)小宮山宏先生:知識の構造化のために
【10min名作探訪】テンミニッツ・アカデミーの意義と発想法
テンミニッツ・アカデミー編集部
イラン戦争と終末論(1)イラン戦争の戦略的背景と米国の政策
なぜイラン戦争がこのタイミングなのか?戦略的背景に迫る
東秀敏
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
知識の構造化のために(1)テンミニッツTVの問題意識
「知識の爆発」の時代、不可欠なのは世界の全体像の把握
小宮山宏
ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大
「ハイブリッド戦争」の実像…ロシアが考えていることとは何か?
廣瀬陽子
ウェルビーイングを高めるDE&I(1)人と組織を取り巻く環境変化:前編
人材はコストではない!人的資本経営が注目されている背景
青島未佳
インフレの行方…歴史から将来を予測する(4)10年後の物価…5つのシナリオ
5つのシナリオ分析…10年後の日本の物価水準はどうなる?
養田功一郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
「逆・タイムマシン経営論」で見抜く思考の罠(3)飛び道具トラップと「文脈剥離」
IT業界で次々に発動される飛び道具トラップのメカニズム
楠木建