戦国大名の外交、その舞台裏
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兵の動員、鎧や具足、馬…戦国時代の合戦準備の実状とは
戦国大名の外交、その舞台裏(8)同盟の破棄と開戦:後編
丸島和洋(東京都市大学共通教育部 人文・社会科学系 教授)
大名同士の領地争いの際、国衆はしばしば両方の大名に服属した。こうした「両属」は争いを回避する有効な手段であった。しかし情勢が変わり、両属が困難になると、国衆の動きが本格的な戦争開始を決定づける要因にもなった。戦国大名にとって国衆の動きは常に重要なものだったのである。(全8話中第8話)
時間:9分01秒
収録日:2019年6月13日
追加日:2020年2月26日
≪全文≫

●両属の破綻:遠山氏の場合


 両属の典型例として、東美濃の国衆である遠山氏を見てみたいと思います。

 美濃には戦国大名として斎藤道三が勢力を伸ばしていましたが、遠山氏とは斎藤道三と従属関係を結んでいませんでした。ただ織田信長の父である織田信秀と友好関係にあり、信秀の妹や娘を奥さんにもらっているという関係にありました。ところが、信秀は道三との戦争に勝つことができず、最終的に道三と和睦を結び、道三の娘を嫡男・信長の奥さんに迎えてしまいました。遠山氏はこれにより突然孤立してしまったのです。

 このようなタイミングで、武田信玄は信濃南部(現・長野県南部)を制圧しました。突然東側に大大名が出現した遠山氏は危機感を覚えました。そこで、信玄に自発的に従属を申し出ることで、領国防衛を図ろうとしたのです。しかしこれは、道三の怒りを買うことになりました。道三からすれば、美濃の一角が武田領になってしまったからで、これは認めがたいというわけです。

 そこで道三は、娘婿の織田信長とともに遠山領に攻め込みます。当然ながらこれに対して遠山氏は、信玄に援軍を要請します。要請を受けた信玄は軍勢を美濃に動かすことになりました。この結果、武田・斎藤間で戦争が勃発するのです。これは、国衆の動向が戦国大名の戦争を引き起こした一つの事例であるといえます。

 信玄は戦争の泥沼化を怖れ、道三に和睦を持ちかけるのですが、道三は受け入れませんでした。ところが、事態はあっけない幕切れを迎えました。斎藤家でクーデターが起こり、嫡男・義龍が道三を敗死させ、強引に家督を継いだのです。おそらく、家臣団は信玄との開戦に危機感を覚えたのだと思います。この結果、斎藤氏は武田領国となっていた東美濃から手を引くことになります。

●武田と織田に両属するという国衆の外交


 しかしこの結果、斎藤家と織田家の同盟が崩壊しました。そして、織田信長はだんだんと美濃に勢力を延ばしていくことになりました。そうすると問題となってくるのが、信長の動向でした。遠山氏からすれば、織田家から3人ほど妻を迎えており、信長との関係は比較的良好でした。しかし、信長が美濃に勢力を伸ばしているということを考えると、武田につき続けるのか、信長に味方するのか、あるいは斎藤に味方するのか、立場をいずれ明確に...

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