戦国大名の外交、その舞台裏
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
和睦・同盟交渉において重要な「取次」という外交官の役割
戦国大名の外交、その舞台裏(3)「取次」という外交官
丸島和洋(東京都市大学共通教育部 人文・社会科学系 教授)
大名間での和睦や同盟交渉の際に重要な役割を担うのが、双方の家臣から選ばれる「取次」である。取次は大名の意向を正確に相手に伝えるだけでなく、その意向が家臣団の支持を得ているということを適切に伝えることが求められた。その意味で取次は現代でいう外交官に相当する、キーパーソンである。(全8話中第3話)
時間:15分14秒
収録日:2019年6月13日
追加日:2020年1月28日
≪全文≫

●「取次」という外交官


 和睦・同盟交渉にあたっては、双方の大名から交渉を担当する家臣が選ばれます。これを私は「取次」と呼んでいます。当時の史料用語としては、「奏者」という名前で出てくることがよくあります。この言葉は、下からの申請を目上に執奏するという意味が強く、対等な大名間外交に用いるには適切ではありません。そこで選んだのが、下から上にという意味合いがあるものの、奏者よりはその意味合いの弱い取次という言葉です。

 この取次が、外交官のような役割を果たしました。取次の役割には、外務大臣のような仕事も含まれるのですが、交渉先の大名ごとに別の人物が設定されるので、外務大臣とすると大臣が沢山いるようなイメージです。そのため、外務大臣ではなく、とりあえず外交官として説明します。


●取次は側近だけでは務まらない


 取次は、大名が自分の家臣から指名する場合もありますが、交渉相手の大名からの依頼を家臣が個人的・私的に受諾したものを、主君が追認して取次となるケースもしばしば見受けられます。後者のほうが多かったかもしれません。このことからも分かるように、取次というのは、役職という形で整備された制度ではありません。大名の家臣が沢山ある仕事の一つとして担う役割です。

 私が研究の中心としている甲斐の武田氏や、相模の小田原北条氏では、一門・宿老格の重臣と、大名の側近家臣がペアを組んで取次を務めることが多いという特徴があります。ちなみに、宿老というのは、家老のなかでも特に地位の高い人物の呼び方と思って下さい。

 このうち、大名の側近家臣が取次を務める理由は、非常に分かりやすいです。側近は、常に側近く侍っている存在です。だから側近というわけですが、彼らは大名の意向を一番理解している人間であると同時に、大名への個人的影響力も大きいといえるでしょう。これは、大名の私的見解を内々に伝える上で有利な立場にいることを意味します。また、戦国時代に限った話ではないですが、文書授受の手続き上、大名に送られた書状は、側近が一度受け取って、大名にその内容を披露する形式が基本でした。

 親子のやりとりにも、取次となる側近が入るほどで、ルイス・フロイスという宣教師を驚かせています。ですから、外交交渉には、側近の参加が必要不可欠でした。

 そこ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
平安時代の歴史~「貴族道」と現代(1)日本の歴史における平安時代の意味
平安時代の意外な真実…貴族社会の華やかさの裏の激動と転換
関幸彦
家康の人間成長~戦略性をいかに培ったか(1)今川「人質」時代と今川義元の思惑
徳川家康の秘密…「辛抱」イメージとは異なる自由奔放な人質時代
小和田哲男
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
織田家中一の武略者…『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の知られざる実像
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(39)上野誠先生の万葉集講義と現代
【10min解説】万葉集に学ぶ「公務員倫理法」の大失敗?
テンミニッツ・アカデミー編集部
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(6)ピョートル大帝の宗教改革
王座に乗った革命家・ピョートル大帝の「宗教改革」と、ソビエト時代のロシア正教の「弾圧」と「利用」の実情
上月豊久
昭和の名将・樋口季一郎…キスカ・占守島編(1)キスカ島撤退作戦
5200人の将兵を救え…米軍も称賛した「キスカ島撤退作戦」の奇跡
門田隆将
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
音楽の父バッハ…なぜ「音楽」が西洋でリベラルアーツなのか?
樋口隆一
「良き対話」とは?――哲学から考える(1)対話とは何か――会話・説教との違い
「良き対話」のヒントを哲学から考える…「対話」の大前提とは、そして「会話」「説教」「場回し」とは何が違うのか?
納富信留
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(1)国守・大伴家持と地方社会の日常
『万葉集』でわかる奈良時代の貴族と地方豪族の関係と日常…歌人・大伴家持の歌に秘められた国守時代の苦労話
上野誠
ロシア「内政・経済・外交」の真実(1)国民の支持を意識するプーチン政治
ウクライナ侵攻も支持率対策か…プーチン政治の実態に迫る
上月豊久