戦国大名の外交、その舞台裏
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
大名の書状に付ける副状に秘められた取次の高度な外交戦略
戦国大名の外交、その舞台裏(5)取次の働き:前編
丸島和洋(東京都市大学共通教育部 人文・社会科学系 教授)
取次のさまざまな活動のうち重要なものとして、大名の書状に付す副状の作成がある。これによって外交相手に対して大名がどのような立場にあるのかを第三者の目から理解できるようにし、同時に家臣団とも一致団結していることが示された。こうした外交官としての重大な役割により、取次は一つの大きな利権になっていった。(全8話中第5話)
時間:9分57秒
収録日:2019年6月13日
追加日:2020年2月5日
≪全文≫

●取次の副状


 今回は、取次のさまざまな活動をもう少し掘り下げたいと思います。戦国大名の外交には、取次という外交官が大きな役割を果たしており、大名の書状に副状という書状を付して、大名の発言を保証するという役割があることは、これまでにお話ししました。こういった書状の作られ方について、面白い事例が残されているので、それをみていきたいと思います。

 例として挙げるのは、今の福島県南部の国衆である白河結城氏と、小田原北条氏の外交です。白河結城晴綱と北条氏康は友好関係にあり、しばしば書状を交わしていました。ところが、晴綱の耳に、不穏な噂が入りました。白河結城氏の宿敵であった常陸国北部(現・茨城県)の大名・佐竹義昭が北氏康と同盟を結んだというものです。その上、さらに婚約までしたという話が伝わってきました。仰天した晴綱は、氏康に事情を問い質す使者を派遣しました。

 使者が派遣された先は、北条氏内部で、白河結城氏との外交を担当している取次の北条綱成でした。北条綱成は、苗字から分かるように、北条氏の一門ですが、彼は相模の玉縄城を預かっており、小田原城にはいない存在でした。よって、綱成は、受け取った書状のなかに氏康宛の書状があるということで、ただちに小田原に転送しました。今度は氏康が驚く番です。

 氏康の弁明はこうでした。「確かに佐竹義昭が挨拶の使者を寄越したことはあり、これは認める。ただし、一度きりの話で、常陸という遠い国からの使者なので、追い返すのもどうかと思って、一度だけ、返事を出したのだ。同盟を結ぶなど、考えたこともない。もし佐竹を攻撃しろと言うのなら、一緒に実行しようと思う」。これが氏康の返事です。


●副状の命令書を一緒に送ってしまった


 面白いのはここからです。北条氏康は、取次である北条綱成に宛てて、副状を作りなさいという命令を記した書状を送りました。その際に、自分が白河晴綱に送った書状の写しを添付して、これを参考に副状を作りなさい、と指示しました。つまり、取次の発言と、自分の発言に矛盾が生じないように、配慮したのです。

 それを受け取った取次である綱成は、ただちに副状の作成に取り掛かりました。そして、晴綱の使者に書状を渡すことになるのですが、何を渡したかが問題になります。まず、氏康が晴綱に宛てた書状(返書)ですが、これはよいでしょう。次に取次であ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
織田家中一の武略者…『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の知られざる実像
黒田基樹
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
核DNAデータで日本人のルーツを探る…アフリカから日本まで来た行程と時期は?
斎藤成也
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(1)シラス論と日本の政治
独裁ができない戦前日本…大日本帝国憲法とシラスの論理
片山杜秀
家康の人間成長~戦略性をいかに培ったか(1)今川「人質」時代と今川義元の思惑
徳川家康の秘密…「辛抱」イメージとは異なる自由奔放な人質時代
小和田哲男
本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌(1)なぜ満洲が重要だったのか
放っておけば朝鮮はロシア領になりかねなかった
渡部昇一
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(2)高齢者総合機能評価とフレイル
“マッチョな老衰”はいない!?若い頃からいかに骨格筋肉量を蓄えるかが健康長寿の鍵
小川純人
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
「満洲」から考える日本とアジア(5)ロシアのシベリア征服と日清日露戦争
「満洲利権」はなぜ日本の手に渡ったか?…ロシアの極東征服、そして朝鮮の混乱が日本を日清・日露戦争へ
宮脇淳子
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
「ホメロス叙事詩」を読むために(5)『イリアス』の世界ーその1
叙事詩イリアス…トロイア戦争最後の50日間を描いた傑作
納富信留
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸
日本の財政の真実を検証する(1)膨らむ借金の知られざる実態
日本の財政の「真実」をデータで徹底検証…国際機関の分析は?
宮本弘曉
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(1)ビジネスのヒントは歴史にあり
『失敗の本質』、中国古典…ビジネスのヒントを歴史に学ぶ
三谷宏治
ルネサンス美術の見方(6)ルネサンスの完成者ラファエッロ
ラファエッロが「ルネサンスの完成者」と呼ばれる理由
池上英洋