百姓からみた戦国大名~国家の本質
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
戦国大名と領国内の村との関係を大きく変えた「目安制」
百姓からみた戦国大名~国家の本質(5)「目安制」の導入
黒田基樹(駿河台大学法学部教授/日本史学博士)
戦国時代においては、村の安定的な存続のために、対外戦争や飢饉災害に対して、さまざまな対策が講じられていった。その中でも重要なのは、大名が村に対して直接納税を求めるようになったことである。これによって、家来による不正徴収が防がれ、統一的な領国支配が確立していくのだが、その中で生まれたのが「目安制」と呼ばれる制度である。(全8話中第5話)
時間:7分09秒
収録日:2019年3月20日
追加日:2019年10月13日
≪全文≫

●新しい領国支配の仕組み


 戦国時代における基本的な戦国大名の構造は、領域国家、納税主体である村の安定的な存立、村の成り立ちの維持を基礎としています。戦国大名は、度重なる対外戦争による危機や飢饉災害による村の存立の危機に対して、村を安定的に存続させるために、さまざまな対策を取っていきました。これが、その後の社会への変化を生み出していきました。このことを、民衆統治についての資料が最も豊富な北条家の事例を基に、ご紹介します。

 まず、新しい領国支配の仕組みが構築されていきます。北条家の例でいえば、戦国時代が始まって50年余りがたった永正15年(1518年)に、北条家の初代である伊勢宗瑞、いわゆる「北条早雲」と呼ばれる戦国大名が、大きな改革を行いました。

 この時期における北条家の領国は伊豆と相模でしたが、ちょうどその地域は大飢饉に見舞われました。北条家はそれへの復興策として、新政策を実施しました。まず、村宛てに文書を出す仕組みをつくり出しました。それまでは、戦国大名は領国における王様なので、対面性のない者に対して直接書類を出すことはあり得ませんでした。身分制社会であったために、自分の署名をした書類を出すとしても、せいぜい自分たちの家来、あるいは寺社に対してのみでした。納税する村に直接書類を出すことは、身分の違いが大きすぎるために有り得なかったのです。そのため、村に対する命令は、基本的にその村を直接支配する家来たちが出していました。

 ところが、実際には徴税に際して家来によるさまざまな不正が存在しており、その不正を見過ごしておくと、村からの大名に納められる租税に差し障りが生じることが判明しました。それゆえ、こうした不正を排除する動きが生じたわけです。そこで、大名の方から実際に納税通知書を村に対して直接送付する仕組みがつくり出されました。徴収するのは家来なのですが、家来はその納税通知書に基づいて徴収することになったのです。


●「目安制」の採用で戦国大名と村との関係を大きく変えた


 そして、その上でこの納税通知書を実行性のあるものにする必要があります。この通知書があったとしても、それまでのように家来が不正を働いて徴収し続けていたのでは意味がないからです。そこで、この通知書と異なる課税をかけてきた家来がいたならば、直接村か...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史