百姓からみた戦国大名~国家の本質
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
民衆にとって生命維持装置の役割を果たしていたのは「村」
百姓からみた戦国大名~国家の本質(2)「村」という組織の重要性
黒田基樹(駿河台大学法学部教授/日本史学博士)
過酷な生存状況を民衆が生き延びるために重要な存在だったのが、村という組織である。村は百姓たちが集まってできた支援的な共同体であり、各家の私権を制約する公権力としても存在していた。この村を単位に、領主は生産資源をめぐって争い、戦が生じた。これが、既存の政治秩序を解体していったのである。(全8話中第2話)
時間:11分52秒
収録日:2019年3月20日
追加日:2019年9月22日
≪全文≫

●村という組織が社会における基本の単位


 戦国時代において、民衆はどのような仕組みをもって生き延びようとしていたのでしょうか。この時に重要な存在だったのが、「村」という組織です。これが民衆にとっての生命維持装置としての役割を果たしていました。

 民衆にとっての根源的な生命維持装置の基本は、「家」という組織です。これは、生産組織、経営組織としての家ということになります。しかし、慢性的な飢饉状況の中では、経営組織としての家の存続が非常に難しい状況にありました。有力な百姓層であったとしても、大抵は3代目ぐらいには潰れてしまっていたのです。

 このように家が永続的に続かないという状況の中でつくり出されたのが、家々が連合し、さらには家を構成していない百姓たちが集まってつくり出す支援的な共同体としての村です。13世紀の後半以降、こうした共同体がつくり出されていきます。この村という共同体を基礎として生存を図ることが、中世後期以降における社会の基本的な在り方でした。

 ちなみに、この慢性的飢饉が克服されるのは、戦国時代を経て、江戸幕府になる17世紀後半ほどです。江戸幕府の将軍でいうと、4代目の徳川家綱、5代目の徳川綱吉の時代であると考えられています。ですから、それまでの人々は、村という組織に依拠しながら懸命に生存を図っていたのです。

 この村という組織が社会における基本の単位であり、この村が安定的に存続していくということを、当時は「成り立ち」と呼んでいました。私もそれに倣い、「村の成り立ち」と表現して、この動きが社会の基本的な展開をもたらしていったのだと考えています。


●政治団体としての村


 この村という共同体の性格はどのようなものだったのでしょうか。

 まず村は、ある一定の地域に存在する、百姓がつくり出した家組織が連合して形成されていました。そして、村の構成員に対して、税金である独自の徴税権、法律をつくる立法権、法律を犯した場合に対しての取り締まりの行為である警察権、さらには村の構成員を兵士とする、対外的な戦争を行うための軍事力を有していました。村とは、そうした力を持ち、自立した政治団体としての姿を持っていたということです。その村の成れの果てが、現在の地域の集落や部落です。つまりこうした村は、もともとは武力をも有する組織であったということなのです。

 村はそ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(3)古書店巡りからネット書店へ
ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新