百姓からみた戦国大名~国家の本質
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
北条家と武田家の全面戦争で顕著になった「御国」の論理
百姓からみた戦国大名~国家の本質(7)「御国」の論理の誕生
黒田基樹(駿河台大学法学部教授/日本史学博士)
戦国大名の構造改革にとって重要なのは、目安制の導入である。これにより、室町時代にはなかった村による大名への直接訴訟権が認められ、万人(村)に開かれた裁判制度が成立した。また、これは村同士の戦争を抑止するものとなり、村が安定的に存続できるようになる。そこで生み出されていったのが「御国」の論理だった。(全8話中第7話)
時間:11分40秒
収録日:2019年3月20日
追加日:2019年10月27日
≪全文≫

●全ての村に開かれた裁判制度


 ここで何よりも注目されるのが、目安制の存在です。天文19(1550)年の改革で、北条家の領国においては目安制が全ての村に認められたのですが、これは全ての村に対して、大名に対する直接訴訟権を認めるということを意味します。

 これまでの政治権力の裁判は、あくまでも構成員の権利調整のレベルでした。ところが、ここで、租税を納入する村に、最高権力者の大名へ直接訴訟する権利が認められ、支配下にある万人(村)に開かれた裁判制度が、初めて成立しました。

 逆にいえば、政治権力における裁判とは、幕府と対面性を持っている者に限られていました。要するに主従関係を結んでいる存在しか幕府に訴訟できなかったのです。幕府にとっては、家来同士の裁判なので、利害調整のレベルです。しかも、この裁判は主人としての恩典として行うという性格のものでした。それが、戦国大名の目安制によって、被支配者である社会主体そのものに裁判を受ける権利が与えられました。

 目安制は、当初は支配における不正や、村の成り立ちを妨げるような租税の取り立て、領主と村との階級間の矛盾への対応のために機能していました。しかし、村はこうした当初の目的をお構いなしに、村が抱えている問題全てを目安制の対象にして、訴訟をするようになっていきました。


●目安制の徹底により、村同士の戦争が抑止された


 その中で重要なのは、村同士の紛争について訴訟し、大名もそれに対して裁判で応えていくという事態です。それまで村は、独自の武力で解決に当たっていましたが、目安制の成立以降は、大名が裁判によって紛争を解決することとなります。つまり目安制は、村同士の戦争を抑止する機能を持つものなのです。村同士の紛争に対して戦国大名は、家中、家来に対してと同様に、相当、兵具、合力を規制しました。

 先ほど述べた通り、これまでの村は、構成員の百姓が戦死したり、相手方の村に攻め込まれ耕地が破壊されるような被害を出してでも、戦争に勝利することで生産資源を確保してきました。そうして生き残ってきたのです。しかし、目安制以降はそうした多大な犠牲を伴う武力行使を回避して、戦国大名の裁判によって問題を解決する仕組みが社会の中につくり出されました。

 ただし、戦国時代において、戦国大名は年の半分ほどは戦争に行っているので、裁判がしょっちゅう...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
戦国合戦の真実(1)兵の動員はこうして行なわれた
戦国時代の兵の動員とは?…無視できない農民の事情
中村彰彦

人気の講義ランキングTOP10
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(6)分別からの超越
ネガティブ・ケイパビリティとは?信じて待つことの意味
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
MAGA内戦、DSAの台頭…過激化が完了した米国の現在地
東秀敏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
編集部ラジオ2025(33)2025年を振り返る
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ