●政治学とは何か
―― 皆さま、こんにちは。本日は慶應義塾大学名誉教授の曽根泰教先生に、政治学入門講座として「選挙をどう見るべきか」というテーマでお話をいただきます。
政治の中で選挙というものは、非常に重要なものです。その前提として政治学という学問の概略といえる部分と、その中で選挙にどういう意味があるのかということをお聞きできればと思っています。
曽根 分かりました。政治学者の間でも、政治学とは何かについて、共通理解というか、合意があるわけではありません。これは相当難しいことで、学者同士で何を政治学の対象とすべきか、ということに関して、そこにあるのは論争の歴史です。
ですが、大まかにこのあたりではないかという非常に広い範囲でいうと、政治学とは、政府の活動とか、政府が行う公共政策とか、あるいは投票行動というようなことを、いろいろな手法、例えば人文科学的な手法や統計学、あるいは科学分析などを使って解き明かそうとするものです。
また、それを大きなくくりでいうと、まず政治の権力です。次に権力がどうやって具体的に行使されているか、つまり政策が決定される過程です。それから政策の中身です。例えば、外交政策とか、社会保障とか。ただ、政策の中身になると、他の分野の人、例えば経済学者だとか、あるいは農業政策だったら農業問題を扱っている人などとよく重なってくることがあるわけです。
また、日常生活に政治は無縁だ、ほとんど関係ないと思っている人が多いかもしれませんが、実は日常生活そのもの、あるいは国民生活そのものが政治なのだという位置づけをしたほうが、むしろ身近な政治というものが分かると思います。
●過半数の議席を獲得することが政治権力を獲得する必要条件
―― なるほど。そういう中で、政治というのはまさに、法律1本決まれば暮らしも変わるし、消費税が上がれば負担も増えるし、補助金が来れば助かるといったところも含めて、いろいろな要素があると思います。そして実際、それを決めるのが政治権力であるとすると、その政治権力をどう手にするか、それがまさに選挙ということになるわけですね。
曽根 権力というものは、抽象的にいえば、経済学でいうところの「効用」みたいなもので、それをどうやって測るのかという難しい問題もあります。ですが、具体的にいうと...