●野党が支持を伸ばすためには何をすべきなのか
―― 直近の選挙ということになりますと、2019年の参議院選挙ということになります。この時の票数だけ見ておきますと、自民党が2000万票、立憲民主党が790万票、国民民主党が320万票取っているという形です。これで見ると、もちろんこれはかなり投票率の低い選挙だったので、単純な比較はできませんけれども、民主党系という言い方をすれば、2017年の衆議院選挙では民主党系で1600万票取れていたのが、2019年の参議院選挙では足して1100万票になっていたということですね。
曽根 だから、いつか底打ちさせなきゃいけないですね。これからV字回復だと。もし、ここが底だとしたら、V字回復して単独で1000万票、政権を取るには2000万票ぐらいまでどうやって持っていくのか、そこが重要になります。やり方は2つしかない。1つは、小選挙区で勝ち上がってくる人が非常に少ないので、この小選挙区で勝ち上がるための努力をすることです。
それから今、選挙がとても難しくなっています。ネットを含めて、メディアを使ったり、キャンペーンをやったり、ということが難しくなっています。これも、例えば、れいわ新選組のように、200万票、300万票のレベルで人気を得るということであれば、できるのですが、これだと政権を獲得するということとは違います。やはり2000万票ぐらいをベースにしないと、政権は獲得できないのです。ではどうするのか。
●野党はしっかりとした政策を打ち出す必要がある
曽根 だから、小選挙区も比例代表も、そこに向けた戦略が重要になるということです。それには1つは、政策が基本的にきちっとしていて、選択肢として国民の腹に落ちる形のものをつくることです。特に経済政策、社会保障、外交、安全保障。それから、少子化になったり、地方が人口減になったりと、社会が変動していますので、そういう変動にどう対処するか。少なくとも、この4本ぐらいは腹に落ちる政策をつくらなければいけないですね。
―― おっしゃる通りです。
曽根 だけど、野党のマクロ経済政策が何かというと、そこがよく分からないのです。社会保障についても、消費税を上げないで社会保障を充実といっていますが、そちらへ行くんですかと思ってしまいます。日本の場合は中福祉低負担です。だから、今の中福祉を中負担で支えようというのが、基本的には増税になるのです。そこを、低負担だから低福祉にする、つまり今の福祉を下げるというのは、おそらく多くの人は乗らないでしょう。
―― それで選挙に勝つと思えないですね。
曽根 だけど、ここにギャップがあるのです。増税があれば、この中福祉がもう少し高福祉になるんじゃないか、そういう期待感を持っている人も多いのです。でもこれは、あり得ません。だから、実はこの期待ギャップを、与党も野党も、自民党もそうですが、どう納得させるかということが一番大きな問題なのです。正直なところ、日本は中福祉の国ですよ。だけど、低負担なのです。そこの確認が、実は必要なのです。
また、もっと高齢化が進み、少子化が進むと、さらに財源が難しくなりますよね。そうなったときの道筋について、どうしたらいいんでしょうとなる。そのときに、かつてのような野党、社会党以来、例えば福祉については高負担、つまり増税ということを述べる野党だったら、本当は分かりやすかったのですが、今の野党はそこを消費税ノーとか、増税しないで社会保障とか言っているのです。
おそらくそこには、経済成長期、日本の税収がたくさんあった頃に高齢者医療費無料とかという悪しき日本の昔の感覚があるんじゃないかという気がするのですね。あの頃は高齢者の数が少なかったから、できました。いま、それに近いことで言われているのは、潤沢な財源がある地方自治体の話ですが、子どもの医療費を小学校、中学校、さらには高校生まで無料にするというものです。
これは実は、できてしまうのです。ただ、発病率で見ると、子どもは低いですし、特に若くて元気な子はあまり病気をしません。だけど、高齢者はよく病気をします。
―― これはやむを得ないことですね。
曽根 また、社会保障でいえば、与野党ともに挙げているのですが、例えば非正規の人を厚生年金に入れるにはどうしたらいいかという問題がある。もう1つ、どの日本の企業も悩んでいることですが、後期高齢者の医療負担について各健保組合は大変になっています。これも整理がついていません。だから、実はまだ山ほどあるのです。
―― 課題が山ほどあると。
曽根 はい。だけど、どれを議論しても、未来は明るくないのです。
―― そういう中で野党としてどう政策を打ち出していくか、確かに難しいことは難しいですね。
曽根 野党としては難しい。...