渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」
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三十年戦争…宗教戦争の地獄図とドイツ宗教社会への影響
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(4)三十年戦争の悲惨
哲学と生き方
渡部玄一(チェロ奏者)
ウェストファリア体制は「近代ヨーロッパの始まり」といわれる。しかし、それに先立つ「三十年戦争」は災厄と呼べるレベルの宗教戦争であった。それがあまりに悲惨な戦争だったために、その後、ドイツでは、根強い宗教対立感情は残るものの、社交の場で「宗教の話」を持ち出すことはタブーとされるまでになった。だが、ウェストファリア条約で「領主の宗教がその地区の宗教」という決まりごとが確定することになったため、その人がどの宗派に属するかは、出身地次第という姿になっていく。作曲家の多くも、だから出身地の別によって宗教が分かれているのである。(全6話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分23秒
収録日:2021年8月6日
追加日:2021年11月13日
≪全文≫

●三十年戦争で1800万人の人口が900万人まで減った


―― 本書で、「まさにドイツだなあ」と印象深く思われるのは、渡部昇一先生がカトリック社会とプロテスタント社会の両方を描いているところです。ドイツは皆さんご案内のように、三十年戦争という非常に苛烈な宗教戦争がありました。

渡部 その中心地になったところですね。

―― そうですね。昇一先生も書かれていますが、当時1800万人の人口が900万人まで減ってしまうほどの殺し合いが行われました。それで結局「ウェストファリア条約」が発され、領主の宗教がその地区の宗教という決まり事になっていくわけです。

 そのために、その対立が根深く残っている。昇一先生が行かれた時代でも、カトリックの方とプロテスタントの方の対話集会があると、集まるのは本当に善男善女の皆さんなのだけれども、話を聞いていくうちに、戦時中の日本の「鬼畜米英」のような話になってきて、「お前がどうだった」「ああだった」となりかねない。400年前はさぞ大変だっただろうということも書かれていました。

 だからこそ、たしなみとして「お前はどっちの宗教なんだ」という質問はしない。当時のドイツでは、自分がカトリックで、好きになった相手がプロテスタントだったら、結婚できるかできないかのような話も含めて書かれていました。先生ご自身が行かれたときのご経験では、何かお感じになったことはございましたか。

渡部 私は1年しか行っていませんし、その後も長期旅行では訪れましたが、それほど住民たちの中に入り込めたわけではありません。そのため、私自身はエヴァンゲリッシェ(プロテスタント)とカトリックの人が争っているような場面は見たことがないし、基本的にはなかったと思います。彼らがもし論じ始めれば、それなりに論争になるでしょうが、おそらく父の時代ほどではないのではないかと思います。

 そもそも「宗教の話はしないのがたしなみだ」と言われていたのは、やはり三十年戦争を経たからです。

 30年のあいだに1700万人ぐらいいた人口が800万人に満たないような状態になった。原爆があったわけでも、機関銃があったわけでも、大砲があったわけでもない時代です。そんな頃にそれほどの状況になったのは、いかに他者が他者に対して残酷になったかということです。

 そのうち、それは単なる宗教的対立を超えてヨーロッパの主導権争いの戦...

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