渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」
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ルターの宗教改革…「免罪符」は実は誤訳?真の意味は?
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(2)カトリックとプロテスタント
渡部玄一(チェロ奏者)
渡部昇一氏は『わが体験的キリスト教論』(原題『ドイツ留学記(下)』)で、「猿の神学、猫の神学」という興味深い話を紹介している。これはカトリックとプロテスタントの違いを、動物の習性になぞらえて説明したものだが、この両者の違いについても、「ルターが免罪符に反対して新教を立ち上げた」などと教科書的なことを覚えているだけでは、その「本当のところ」は到底理解できない。日本は近代ヨーロッパから大きな影響を受けているが、キリスト教への理解がなくては、彼らとの思想や行動の違いは分からないままだ。ヨーロッパにおけるキリスト教の世界観をひも解いていく。(全6話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分56秒
収録日:2021年8月6日
追加日:2021年10月30日
≪全文≫

●「根っこに宗教があった」――ドイツ人と日本人の違い


渡部 父の体験談の一つに、当時の(ドイツの)普通の主婦の人たちの話があります。ちゃんと大学を出て知的な修練を受けた人たちは、家事その他を完璧にこなしながら、学生だった父が招待されて訪問すると、いろいろな思弁的な話や人生の話、哲学の話などを何時間でも喜んで生き生きと議論する、ということでした。

 その当時、(日本の)大学の哲学科を出た人は、西田幾多郎の『善の研究』をだれもがひも解いていた。ところが会社員になった後は、自分の読書をさらに突き詰めていくような人はほとんどいない。だから、ドイツの場合、卒業して主婦になったような人でさえ、「生きるとは何か」「正しいとはどういうことか」というような命題の与える知的興奮に対して、生き生きとした要求を持ち続けることが不思議でならなかった。

 やがて、この違いの「根っこに宗教があった」ということは間違いないと分かった、と父ははっきり書いています。そういう知的好奇心の強さは、ある程度以上信仰の強い敬虔な人たちに必ずある。カトリックであるかプロテスタント(ドイツではエヴァンゲリッシェ)であるかはあまり関係ない、と言っています。


●ルターが攻撃した「免罪符」、その意味と誤解


―― 明治期に近代国家をつくろうとした日本人も、特に留学をしていたような人たちは、国家の他に、いわゆるキリスト教社会というものが厳然とあることに気づいたようです。道徳部分はキリスト教社会が支え、その上に国家がある、「二階建て」ということですね。この土台なしに、政府だけで「近代国家」ができるのだろうかというのが、開国した当時の人たちの大いなる悩みになったようです。

 今、先生はヨーロッパの話をされましたが、アメリカの大統領選挙などの折にも、熱心なクリスチャンの方々が多い中西部(バイブル・ベルト)の投票行動などが取り上げられることがあります。私たちが現代社会を考えるうえでは、ヨーロッパにしてもアメリカにしても、そのベースにある「古き良きキリスト教社会」がどういうものなのかということが分からないと、多分見えてこないところがあると思います。

渡部 父も同様のことを言っています。アメリカのほうが長い私は、ヨーロッパとの違いを大きく感じます。ともあれ父のこの本(『ドイツ留学記 下』)を読んで分かるのは、やは...

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