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ルネサンス音楽とバロック音楽の違い…バッハの特徴とは?

クラシックで学ぶ世界史(2)宗教改革と音楽様式の変化

片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授
概要・テキスト
単純だったグレゴリオ聖歌がポリフォニーに変化したのは、社会の複雑化を反映したものだった。神の教えは教会が占有するものではなく、人が信仰の中に見いだすものだという動きを受け、音楽も民衆的になっていく。宗教改革が起こり、時代はルネサンスからバロックへと移り、教養としての「音楽」へと変化していった。(全13話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:09:41
収録日:2019/08/26
追加日:2019/10/26
≪全文≫

●ローマ・カトリックの信仰独占に非を鳴らしたプロテスタント


片山 16世紀、ルターに始まる宗教改革があります。「なんでローマ教会が、現世における神の秩序を独占できるんだ」というカトリックに対する抵抗勢力です。神は教会が大事だという、確かにキリストが「教会に、皆が集え」とメッセージを残してはいるけれど、その教会は別にローマ・カトリックの教会に限ったはずはない。神とみんながもっと直接つながって、みんなで教会をつくり、その中で人々がそれぞれの実感のこもったように祈るのが当たり前なのではないか。これによってプロテスタントの運動が始まるわけです。

 今までは聖書もラテン語で書かれており、説教などもそれに基づいてなされてきました。大変悪い言い方をすれば、聖書の解釈なども本当か嘘か分からないようなことを神父が言ったりしてもよかったわけです。だって肝心のところはラテン語で、みんながよく理解できない表現だからです。これも言い方は悪いですが、「分かったような、分からないような、でもありがたい世界」から、「みんながちゃんと神の教えやキリストの教えをよく分かり、理解しよう」とするのが、プロテスタントの運動ということです。

 当時、16世紀から17世紀のヨーロッパ社会のことを考えていただくと、識字率の問題に当たります。例えば、ルターの場合、ラテン語だった聖書をドイツ語に訳すという業績を残しました。でも、ドイツ訳になった聖書の文字をみんなが読めたのかというと、決してそうではなく、教養のある特別なインテリ階級でないと読めなかった。いくら聖書をドイツ語に訳したからといって、「みんなのいつも使っている言葉だから分かるでしょう」というわけにはいかなかったのです。


●聖書の教えを共有するため「替え歌」に精を出したルター


片山 聖書はドイツ語に訳されていっても、やはり牧師が語り、説教する。しかも、その教えを反映するものをみんなで共有するためには、みんなで読むというわけにいかないから、説教を聞いた後にみんなで歌う。歌うことで、教えを確かめたのです。

 そうなると、カトリックが推進してきたグレゴリオ聖歌的のような、この世ならぬ、歌いにくい、超越的な歌のようなかたちではまずい。神さまの教えやキリストの教えをドイツ語の分かりやすい言葉にして、みんなが覚えて歌えるようにしなくてはいけない。歌詞も分...
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