クラシックで学ぶ世界史
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ワーグナーの楽劇はなぜ長いか…マイアベーアへの反発と理想
クラシックで学ぶ世界史(8)パリのオペラとワーグナー
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
19世紀の音楽は、パリのオペラ座で始まる。当時のパリはロンドンと並び世界の富が集中する世界の都だった。オペラ座のグランド・オペラ見物は、ちょうど江戸の歌舞伎見物と同様に、市民のステータス・シンボルとして発展していくのだが、一方、ワーグナーのオペラはパリではうまくいかなかった。それはなぜか。(全13話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:10分31秒
収録日:2019年8月26日
追加日:2019年11月30日
≪全文≫

●19世紀音楽を語るに欠かせない「パリ」という都


―― 前回は、市民革命の時代を象徴したような音楽がベートーヴェンとベルリオーズのところで来たというお話をうかがいました。この後、ベートーヴェンに憧れて作曲家になっているのが、例えばワーグナーであり、彼に続く人びとがやってくるわけですね。

 非常に特徴的なのが、たとえばベートーヴェンの交響曲第三番『英雄』は60分ぐらいの曲です。これが第九になると、CDの長さを決めるときに「カラヤンが『第九』が入る長さでと言った」ため、74~75分の規格ができたという有名なエピソードがありました。そのように70分ぐらいの曲まで行ったため、音楽自体がますます肥大化ないし巨大化していく流れがドイツに出てくる。

 例えば、ワーグナーになると、『ニーベルングの指輪』というオペラは4夜連続で見ないと、話が終わらない。そんな膨大な曲ができたため、その後のブルックナーやマーラーになると、平気で70~80分という長さの曲を聞かせるような、拡大志向の曲ができてきます。これは、実に19世紀的ですね。

 ワーグナーが生まれたのは1813年、亡くなったのは1883年です。ブルックナーは、1824年生まれで、1896年という19世紀末に亡くなっています。マーラーの場合、1860年に生まれて1911年に亡くなっている。みんなまさに19世紀後半から20世紀にかけての時代の人たちであるわけですが、この頃はヨーロッパの帝国主義的な動きが産業革命と相まって、非常に巨大化していく時代であり、音楽もそういう様相を示してきたということかと思います。この時代の特徴的なものについて、先生はどのようにご覧になっていますか。

片山 ワーグナーのオペラを考える場合には(ベルリオーズとも関係しますけれども)、一つ、パリの話をしたほうがいいかもしれません。

 ワーグナーは「パリでオペラ作曲家として成功したい」という夢を抱いていました。なぜならば当時は、ロンドンもそうですけれど、やっぱりパリが「世界の都」と呼ばれていたような時代で、音楽的にも中心だったからです。例えばイタリア人のオペラ作曲家ロッシーニなどもパリで成功して、パリで暮らしていました。

 当時の世界で最も豊かな街の中心であるパリとロンドンに集まってきたのは、帝国主義的な富です。フランスやイギリスの発展は、世界に植民地を獲得していくことによって得られたものです...

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