クラシックで学ぶ世界史
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ベートーヴェンの音楽を生んだフランス革命と動乱の影響
クラシックで学ぶ世界史(5)ベートーヴェンの時代-上
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
フランス革命を合図にしたかのようにウィーンの音楽界にデビューするのがベートーヴェンである。市民革命と革命戦争、ナポレオン戦争という長い動乱のさなかに「市民の時代」が確立、これまでにない刺激とテンションを音楽に求めるようになる。(全13話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:13分35秒
収録日:2019年8月26日
追加日:2019年11月9日
≪全文≫

●ボン出身のベートーヴェン、ハイドンに出会う


―― (ハイドンやモーツァルトの過ごした)端境期を経て、いよいよヨーロッパに革命の時代がやってきます。前回で、モーツァルトの亡くなったのがフランス革命の2年後という話がありましたが、皮切りはフランス革命でした。クラシック音楽の世界は、まさにベートーヴェンの時代を迎えます。

 ベートーヴェンは1770年に生まれて1827年に亡くなります。彼の一番有名な逸話は、交響曲第3番『英雄』についてでしょうか。もともとはナポレオン・ボナパルトに献呈するための作品だったのを、ナポレオンが(共和国の理想を裏切って)皇帝の座に就いたため、怒って表紙をグジャグジャグジャにして(献辞を)破り捨てたと言われています。実際、そういう楽譜も残っているそうで、伝説的に語られますけど、まさにその時代を象徴する話ですね。

片山 そうですね。ベートーヴェンはボンの出身です。ここはカトリックですが、ケルンの教会の領地になっています。

―― あの大聖堂のあるところですね。

片山 あのケルンの司教が支配しているエリアで生まれました。ボンは街道筋に当たるので、それなりに先進的なエリアではありますが、同じヨーロッパでもハプスブルク帝国やフランス、イギリス、プロイセンなどと比べると、少し取り残された感があるというか…。

―― 保守的な土地柄、ということですか。

片山 そうですね。そういうところで育った人ですが、フランス革命の年には19歳になっていました。ベートーヴェン家は、ボンのそれなりの音楽家の家柄です。だから、音楽の教育は早くから受けていて、とくにいわゆる鍵盤楽器(ピアノ)の大変得意な天才青少年として売り出そうとしていた。でも、ボンだと限られた世界になってしまうと危ぶんでいたときにハイドンと出会います。


●「市民の時代」の作曲家としてスタートするベートーヴェン


片山 当時のハイドンは、ハプスブルク帝国ではもう食べられなくなった時期で、ロンドンを2回長期滞在で訪れています。その帰路、ロンドンに行ったハイドンがウィーンに帰ろうとしてボンを通ったとき、ベートーヴェンが会いに行く。「こういう曲をつくっているので、弟子にして、ウィーンの音楽界で活躍できるようにしてください」と売り込みに行ったのです。

 個人の弟子がたくさんいてくれた方が生活が成り立つ時代なので、ハ...

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